第34話 女神の正体④




「なんちゃって!」




「っ!ミィ!」


「わかっております!」


 ミィに攻撃され、体をくの字して苦しんでいるように見えた女神だったが、顔だけをぐんっと上げてニタリと不気味に笑った。

 それを見たライヤードとミィは、女神から大きく距離を取る。


「あははははは!バレちゃった!バレちゃったじゃないのヨォ!せっかく隠してたのに!綺麗な女神を演じてたのいい!」


 口からダラダラと涎を垂らしながら女神がケタケタと笑う。その不気味な姿に、御門とサキラは顔を真っ青にして立ち尽くしていたが、すぐに怒りの表情へと変わった。


「魔族どもめ!女神に何をした!」


 いまだにライヤードたちが何かをしたと勘違いしているのか、再び怒鳴ってくる御門にミィは大きなため息をつく。


「いくら偽者とはいえ、少しは勇者として活躍していたのでしょう?どちらが駅でどちらが味方なのか、状況把握もできないのですか?」


「にせ…もの…だと?」


 ミィの言葉を聞いた御門が怒りでフルフルと震えている。みぃは気にせずに言葉を続けた。


「えぇ、そうです。そちらの聖女もまた偽者です。」



「なにを!」


 自分に矛先が向いたサキラが反論するが、ミィがそれを遮る。


「いいですか?勇者も聖女も女神が見出すものなのです。ですが、あなたちを勇者と聖女と言ったのはそちらの反女神。あなたたちには勇者も聖女の力もありません。ただ反女神の力で似たような力を与えられていただけにすぎません。」


「何を馬鹿な!そんなわけが!」




「あは!その通り!その通りヨォ!せっかく楽しんでたのに邪魔しないでよ、女神様ぁ。」


「きゃあ!」


「っ女神!一体なにを!」


 ゲラゲラと笑う女神がサキラを捉えてその喉に鋭く伸びた自分の爪を食い込ませる。サキラの悲鳴を聞いてすぐに助けようとした御門だったが、女神に「動いたらだめ」と言われてピタリと止まった。


「女神!どうしたんだ!魔族に心を操られているのか!それなら俺が勇者の力で目を覚まさせて!!!…っあ、あれ?」


 御門がいつものように、自分の中に感じる勇者の力を引き出そうとした。しかし、なぜだかその力が全く感じられない。何度も何度も力を使おうとするが、手応えが感じられない。


「どう、して…?」


「御門!っ、私が!」


 絶望したように膝をつく御門を見て、サキラも同様に聖女の力を振るおうとする。しかし、結果は御門と同じだった。


「そんな…わたしは、聖女として…いままで、たくさんの…ひとを!」


 ブツブツと小さく呟き続けるサキラを、女神は大層面白そうに眺めている。


「あは!あはは!あははは!やっぱり人間で遊ぶのって楽しいぃーーー!女神もそう思うでしょぉ?」


 女神はニタニタと笑い続ける。

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