第23話 魔族救出作戦①
「ん…。」
ライヤードの部屋の大きなベッドで微睡んでいた亜月は、何やら話し声を聞いてゆっくりと目を開ける。
「あれ…、ライヤードさん?」
「あ、起こしちゃったかな?ごめんね、夜中だからまだ寝てていいよ。」
「どこか、行くんですか?」
どうやらまだ夜中のようで、外には明るい月が煌々と輝いている。
「うん。ちょっと野暮用でね。すぐに帰ってくるから心配しないで。」
ニコッと笑ったライヤードがベッドまで近づいてきて亜月の頭を優しく撫でる。しかし、亜月はライヤードが最近忙しくしており、なかなか城に帰ってきていないことを知っていた。それに自分との時間もほとんどとれていないことも。
「…また置いていくんですか?」
「っえ!?!!へ!!!?」
後になれば顔が真っ赤になってしまうような甘ったれたセリフだが、今は寝ぼけていたせいかそんな言葉がスルリと口から出てしまった。亜月の甘えた言葉を聞いたライヤードは顔を真っ赤にして固まってしまっている。しかしねぼけてそんなことに気付かない亜月はさらに畳み掛けていく。
「私のこと、世界で一番幸せな女の子にしてくれるんじゃないの?ならなんでそばにいないの?わたし寂しいの嫌。いつでもそばにいてくれる人がいい。」
「あ、あっ、あづ、き!!?!」
自分の頭を撫でていたライヤードの手を取り、亜月は手のひらに頬を擦り寄せる。
「ねぇ、一緒に寝よ?寒いのやだ。」
「あ、あ、も、もちろん!」
「なーにがもちろんだ。お前だけ恋人とイチャイチャさせる訳ないだろ。さっさと来い、馬鹿野郎。」
「へ?」
突然部屋に別の男の声が響く。その声を聞いて覚醒した亜月はライヤードの体を押しやった。油断していたライヤードはぎゃっ!と悲鳴を上げて顔面から床に倒れ込む。
「あ!ご、ごめんなさいライヤードさん!」
「あーあー、気にすんな。どうせ怪我なんかしてねーんだから。なんなら色ボケした頭が治るかもしれねーぞ。」
ライヤードの椅子にふんぞり返って座りゲラゲラと笑っているのは、浅黒い肌に紫の髪と瞳。頭の左右から立派な角が生えた筋骨隆々の男だった。黒の革のパンツに、ブーツ、そして上半身は裸だが、その肌には花をモチーフにしたようや刺青が入れられている。
「お前がライヤードのイロか。ってことは将来の魔王妃だな。俺はモルガーン。ライヤードの部下だよ。末長くよろしくな。」
モルガーンは椅子から立ち上がると、ベッドまで歩み寄ってきて亜月に握手を求めてくる。亜月も手を差し出そうとした。
「駄目だよ。こんなやつと握手したら妊娠する。」
それをライヤードはモルガーンの腕を手刀で叩き落として防いだ。
「馬鹿言うな。俺が妊娠させたいのはリィルゥだけだ。だから早く助けに行くぞ。俺の愛しい番いが待ってるんだからな。」
「助けに行く?」
モルガーンの言葉に亜月が首を傾げる。
「うん。前に人間に見た目がいい魔族が囚われてるって言ったでしょ?その子達を助け出す算段がやっとついたんだ。」
モルガーンをしっしっと亜月から遠ざけながら、ライヤードが説明してくれた。
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