第22話 勇者たち②

「サ、サキラ!どうしたの、この傷!」


「話は後だ!女神はどこだ!」


「せ、聖堂に!」


 腕を一本持っていかれたことに加え、ライヤードとの戦闘で御門の魔力がほとんどなくなってしまったことにより、サキラの腕を完全に治すことが出来なかった。とりあえずの止血を施した後、御門は苦しむサキラを抱えて大急ぎで王都まで戻ってきた。


 女神であれば、自分たちのものよりも上位の回復魔法が使える。城に戻った御門は怒鳴りつけるように旅の仲間である女魔法使いのベルベッドに尋ねた。サキラの傷を見て青ざめたベルベッドは、急いで女神の居場所を告げる。サキラをベルベッドに任せた御門は駆け足で聖堂まで急ぎ、その扉を開けた。


「女神!」


「どうしたの?御門君?」


「サキラが魔王に腕をちぎられた!早く治療してくれ!」


「なんですって!」


 聖堂にある祭壇の前に立っていた女神が小さく悲鳴をあげる。


「早く案内しなさい!私の聖女を傷つけるなんて絶対に許さないわ!」


「ベルベッドに任せてある!急いでくれ!」


「えぇ!」


 女神を連れてサキラたちの所へ戻ると、ベルベッドが癒しの魔法をかけていた。


「女神様!サキラを!」


「えぇ!私が来たからにはもう大丈夫よ。癒しよ!愛しき聖女へ降り注げ。」


 女神が目を閉じて言葉を紡ぐと、サキラの体がカッと光った。それがおさまると、なくなったはずの腕が元に戻っていた。サキラの顔色も良くなっている。


「良かった…!」


「ん…ミカド…?」


「あぁ、俺だ。本当に無事で良かったよ、サキラ。」


「心配かけてごめんなさい。」


 お互いに手を握り合って御門とサキラは微笑み合う。ベルベッドはそれを微笑ましく見ていた。女神もまた満面の笑みでそんな2人を眺めている。


「無事で良かったわサキラ。…憎き魔王め。絶対に許すものか!」


 怒りに震える女神に御門が声をかける。


「…魔族も全面戦争を開始すると言っていた。それに今まで人間たちに容赦していたというようなことも言っていたぞ、女神。」


「そんなもの、負け惜しみに決まっているわ!人間たちと魔族との戦いは明らかに人間たちの方が優勢よ。女神である私をはじめとして、聖なるものたちが結束して戦っているんだから。魔族などに負けるはずがないの。今回あなたたちに傷を負わせられたのは運が良かっただけ。次に戦闘になれば必ずミカドたちが勝つから安心して。」


 女神が御門に向かって優しく微笑む。


「愚かで醜い魔族どもにこの美しい世界を渡すわけにはいかないの。大変な戦いだけど、人間たちを守るためにどうかついて来てくれるかしら?」


 女神の問いに、御門とサキラは力強く頷いた。


「もちろんだ、女神よ。俺はそのために召喚された。サキラたちとともに必ずこの世界を救ってみせる。」


「私もです、女神様。ミカドの力を借りて必ずや魔を討ち滅ぼして見せましょう。」


「2人ともありがとう。」


 女神は瞳を潤ませながら2人に礼を言った。ベルベッドもまた、2人と同じように深く頷いたのだった。










「あは!馬鹿みたい!」


 心底馬鹿にしたような声は小さく闇に消えていった。

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