第3話 私と御門君と聖女と①

「さぁ、着いたわよ。2人とも目を開けて。」


 女神の声が聞こえてきてゆっくりと目を開ける。


「わぁ!すごい!」


 私たちが立っていたのは、荘厳な大聖堂の中だった。色とりどりのガラスが嵌め込まれた窓から光が入り、大聖堂の中をカラフルに染めている。


「すごく綺麗だね、御門君!」


「あぁ…。」






「おいでくださったのですね、勇者様。」



 すると、鈴のなるような可愛らしい声が大聖堂に響く。声は私たちの背後から聞こえる。それにいち早く反応した御門君が振り返る。そしてすぐに固まった。


「君が…聖女か?」


「はい…。あなたさまが…?」


「俺は勇者らしい。御門と呼んでくれ。」


「なら私はサキラと…。」


「サキラ…、いい名前だ。」


 背後にいたのは、先程女神が見せてくれた聖女だった。実物は映像の100倍可愛い。所作も優雅で声も可愛らしいとかズルすぎないか?


 しかも御門君が笑ってる。滅多に笑顔なんか見せない御門君がサキラさんに心からの笑みを向けているのだ。


「わ!私は亜月っていいますー!仲良い子たちはアヅって呼ぶからサキラさんもそう呼んでくださいね!よろしくよろしくーーー!」


 2人の間に割って入り、サキラさんの手を取ってブンブンとシェイクハンドした。絶対にいい雰囲気なんかにさせるもんか。御門君は私の彼氏だ。私の告白に答えてくれたんだ。


「あ、ちなみに御門君は私の彼氏なので。そして将来は結婚する予定なので。よろしくお願いしまーす!!!」


「おい、勝手なことを言うな!」


「ひぎゃあ!」


 また御門君のチョップをお見舞いされてしまう。どうしてだろう、先程よりも力が強いような気がする。


「す、すまない!確かに付き合ってはいるが、結婚の約束などはしていない。あくまで彼女なだけだ。…君に誤解されたくないんだ。」


「そうですか…。大丈夫ですよ、御門さん。」  


 サキラさんは私によろしくお願いしますと微笑んだ後、御門君を熱っぽい視線で見つめている。そして御門君もまたそれに応えるように見つめ返しているのだ。


「わーーー!それでそれで!勇者とかなんとかの説明はないんですか!」


 いい雰囲気をぶち壊すためにわざと大きな声を出す。御門君は迷惑そうに耳を塞ぎ、サキラさんは苦笑している。


「それに関しては私が説明するわ。奥の部屋に来てちょうだい。」


すると、先ほどの女神が現れ大聖堂の奥の扉へと促してきた。御門君はサキラさんの手を取り、エスコートして先に行ってしまった。慌ててそれを追いかけようとするが、手を女神に掴まれ足止めさせられた。


「ちょっと!!」


「私は忠告したわ。諦めなさいって。こちらの言うことを聞かなかったのはあなただってこと忘れないようにね。」


 美しい女神ら笑って私に告げてきたのだった。その時の自分には今後どうなるかなんて、全く予想もできていなかった。ついてきたことをとてつもなく後悔することになるなんて。

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