チート系勇者によって魔王陣営がピンチになったらしいので魔王陣営に転生しまた。。

神崎あら

プロローグ 送られる



 まだ魔王陣営が世界の8割を掌握していた頃、神はそんな地上を憂い一人の勇者を転生させた。

 しかしたった一人の勇者では魔王を倒すことは到底無理だったらしく、それを重くみた神は次から勇者にアドバンテージと呼ばれる特殊な力とチート級のスータスを与えて転生させた。

 このとき生み出された勇者はおそろしく強かったがなんとか魔王が踏ん張りまたも勇者は敗れる事となった。

 そして神はその現状を見て今度は10人のチート級の勇者を転生させた。

 これには流石に魔王も勝てず、魔王陣営は初めて敗北する事となる。

 それから100年間、神は魔王根絶のため毎年10人のチート級勇者を送り続け、魔王一族は残すところ娘一人のところまで追い込まれていた。

 そんな時だった、神がそんな魔王軍をみて気まぐれにそちらの陣営にも転生者を送ると言い出したのだ。

 そしてその転生者というのが……


「俺というわけか」

「ああそうだよ」

「そしてあんたが……」

「そう俺が神さ」


 身長約178センチくらいで端正な顔立ち、そして痩せ型とは言い難いが、太っているわけでもない理想的な体型。

 なるほどこれが神か。


「それで一つ質問なんだが、何故俺なんだ?」

「うーんそれはね、俺の気まぐれかな」

「……は?」

「いやさ俺は神なわけじゃん、全生物ヒエラルキーの頂点にして俺以上に偉い人いないのよね」

「……」

「だったらさ、人類救うのも魔王を救うのも俺の気まぐれなのよね!」



 そう笑顔で話す自称神に俺は少しばかりの苛立ちを覚えた。

 

「じゃあ俺はその気まぐれでたった今から瀕死の魔王軍に転生するわけか」

「そうなるね!」

「なるほどな……では一つ聞くが俺が魔王陣営を裏切って勇者側につくと言ったらどうする?」

「それは困るなぁ、まぁでももしそうなったら君は身体中から血を噴き出して死ぬだろうね」

「は?」

「いやだってさ、神の意にそぐわないことする奴とか生かす価値なくない?」


 こいつ……なるほどな基本的に話の通じない類のやつなんだな。

 まぁそういう奴だとわかればこっちも立ち回りを変えないとな。


「わかった俺が悪かった、大人しく魔王陣営につくから殺すのだけは勘弁してくれ」

「わかればいいよ」

「でもそれだと俺はただ死にに行くだけじゃないのか?」

「いやそれは大丈夫だよ、これから勇者陣営に人は送らないから」

「……そうなのか?」

「うん、もう十分戦力はあげたからねここからは人類側には自力で頑張ってもらうよ、ただ魔王側が弱すぎるから君とあともう2人転生者を送ろうと思っているよ」


 あと2人か結構多いな。

 まぁでもどうやら死地に送られるわけじゃないようだな。

 よかった、死んで転生してまたすぐ死ぬとか辛すぎるしな。


「それじゃあもう聞きたい事とかはないかな?」

「ああ特にないな」

「君は話が早いから助かるよー、さっき魔王陣営に送った子はギャンギャン泣くから大変だったよ」


 気持ちはわかる。

 おそらくその子も病や事故で死んだばかりでどこか知らない場所で、しかも何が何だかわからない状態でこんな話を聞かされるんだ普通はそうなる。

 昔から不幸というやつに謎に縁があったため、俺はこう言った状況にもたいして感情が動くことがない。

 故に比較的冷静。


「じゃあそろそろ送るよ、えっと……本名が長嶋大吾だから向こうではダイゴだね」

「なんでもいい」

「うん、話が早いね君は助かるよ」


 神はそう言って対面の俺の肩に触れた。

 その瞬間俺の身体は光に包まれた。

 

「じゃあねダイゴ、次会う時はまた君が死んだときかな?」

「だろうな」


 縁起でもないこと言いやがって、結局最後まで真意の読めん奴だったな……。

 視界も真っ白になり全身の感覚がスッと無くなっていった。

 これが異世界転送ってやつなのかな。

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