パターン2・マゾ女の場合

 グレゴリーナ・ザムザは、ある朝、何か気がかりな夢を見ていたあとに、目覚めると、自分が一匹の、まがまがしい形状の毒虫にメタモルフォーゼしているのに気が付いた。


…が、彼女はただのサラリーマンの中年男ではなかった。


 若い娼婦で、そうしてなまめかしい美女だった。

 触れなば落ちんという、あだっぽい風情と姿態をしていて、かなりの淫乱だったのだ…


 「えええー? ナニコレ? 不条理劇? 流行らないアナクロブンガク? たまったもんじゃない」


 嘆き悲しみ、大声で泣いた。 その声は、テレビでしか聴いたことのない野性のケダモノじみた身の毛のよだつ恐ろしい叫びだった。


 一昼夜泣き暮らして、疲れ果てて昏々と眠り、日が暮れた後に、薄暗い部屋のベッドで目覚めた。


 (…もしかしたら、元に戻っていないかしら?)


 そう考えて、おそるおそる、右の腕を眺めた。

 そこには、見慣れた白い若々しいオンナの華奢で伸びやかな腕があった。

 (! 戻った! 治った! ナニカの悪い夢? ああほっとした。 荒唐無稽すぎて滑稽になるそんなオハナシ、イマドキにありえないと思った)


 独り言ちて、グレゴーリナは安堵の吐息を漏らした。


 が、悲喜劇はそれで終わりで無かった。


<続く>

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