第12話 コボルドの名前はカノンか?



「じゃぁ、ガラムの洞窟行くなんて言わないで、早速魔王の城に乗り込むか?」


 驚くべきレオンの話に目を丸くするマシールとユーリだった。


「お前たちのゲームクリアの最短記録を作ろうじゃないか!」


「いいんですか!」


「まずは装備を整えてからだ。俺の株を一部売却すればお前達の装備ぐらいなんとかなる」


「はい!」

 

 この世界では現実世界でプレイヤーが持っている株を売却して軍資金を得る事が可能だ。

 ジョス=レオンの株は1株9348円。千株だけ売れば、9,348,000円。それを元手にマシール達は、より強力な装備を手に入れた。

 冒険者の村ルキドの大通りイブラム通りに面した防具屋で最高級品を買い漁り、見てくれだけはいっちょ前になったマシールとユーリは、魔法使いをパーティーに引き入れる為に観測者となった。

 観測者システムとは、他のプレイヤーの戦闘を観察して、いいプレイヤーがいたらスカウトするシステムの事である。


『れん、いい人いる?』


「こっちにはいない」


 現実世界で、愛崎れんは画面に釘付けになっている。


『ジョス=レオンさんの方は?』


『俺にも名前はある。ギザ=シルバザールだ』


『じゃあ、ギザさんの方は?』


『いるにはいる』


「本当に?!」


『だが、問題がな……』


「問題?」


『お前達、ドワーフ族の魔術師って聞いた事があるか?』


『えっ?!』


「だって、ドワーフって大概戦士や鍛冶屋をやっている人種でしょ?」


『それが『7人の侍』ならぬ、7人の魔法使いをやっているんだよ』


「そうなんですか!」


『ガラムの洞窟の事を熟知しているようだし、正にうってつけなんだがな。大丈夫か?』


「人間の私はいいですけど、シィちゃんのキャラクターはエルフだし」


『私自身は問題はないけど。戦闘自動モードにした時に、うまく性格調和出来ないと思う』


「そうね」


『やめるか? 俺はお前達のサポート役でしかないからな。お前達が決めてくれ』


『いや、組もうよ、れん。株主が期待してもっと株を買ってくれるかもしれないし、ディーラーの注目を浴びるかもしれにない』


 いささか計算高い側面が出てしまったが、シィに、


「わかった。話しかけてみましょう」


『よし。交渉役は人間のマシール、れんに任せる』


「はい。彼らがいる場所は?」



『魔王の城の中だよ』



第12話 了


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る