反射や発作でかいたモノ集めただけ。

@bay193

お題「うたた寝」「内緒話」

「うたた寝」「内緒話」



…こんなところで珍しい。

春陽のぽかりとした熱の残る縁側で人影を見つけた時に、そう思ったのは事実だ。膝の上に広げられているのは、先日彼が勧めてきた御伽草子の本だろう。よくみると脇に積まれた数冊も同じ草紙の続き物の様だ。

たまには気分転換をと縁側で読み出したが、陽気に誘われいつの間にか夢の中といったところだろうか。広げられた本や、積まれた本の上に並べられた春の花々は俺より前にもここにいる彼に気づいていたものがいて、かつそのあとも彼がそれに気づいていないということなのだろうと思われた。


…それにしても、よく寝ているものだと思う。こうやって俺がしゃがみこんで顔をまじまじみていても、まだ起きる気配もない。なにやら楽しい夢でもみてるのか、はたまた体を包む陽気が心地いいのか、とても幸せそうな顔をしているのだ。

「…どんなあなたも、やはり美しいなぁ…」

思わず言葉がこぼれてしまった。あぁ、でも。今ならきっと、彼の耳には届くまいなとひとり苦笑をしながら立ち上がる。気持ちよく微睡んでいるものを邪魔する趣味はないし、起こすなら空が紫紺をにじませてからでも遅くはないだろう。


俺はうたた寝をしている彼を起こさないよう、その場を離れた。

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