あえかな羽に

睦月

プロローグ


夢には大きく振り分けて2種類が存在すると思う。



ひとつめ。これは夢だと認識しながら、どこか俯瞰してみる夢。

ふたつめ。夢か現実か判別がつかないまま物語が進んでいく夢。



いまあたしがみている夢は前者だ。

いや、誰かに「みさせられている」といった方がいいのかもしれない。




この夢には、あたしはおろか知っている人物が誰も登場してこないのだ。




長い黒髪をなびかせる美しい少女。

その少女に、肩にかかる髪を耳にかけながら明るい笑顔で話しかける少女。



制服を着ているから中学生か高校生だろうか。

主にふたりのほのぼのとした日常を覗いているようだった。




しかし、急に砂嵐のようなザザ…というノイズと共に映像が乱れ始めた。




フラッシュのように激しく場面が切り替わり、

無数の情景が目に入る。




教室?帰り道?病院?屋上?







最後に見たのは、フェンスを飛び越えはらりと舞う黒髪だった。


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