どうして異世界に消えたキミからLINEが届くわけ?

misaki19999

第1話 大ミミズの食し方

キララから来たLINEにはこう書かれていた。


『大ミミズの食べ方を知りたい』


大ミミズの食べ方。


俺はすぐにLINEを返す。


『調味料はあるの?』


『ない』


そりゃないだろう。なんで聞いたんだ、俺。キララのスマホの充電がもったいないので、

『ちょっと調べてみる。一度電源切って』

そう送った。


返事はない。切ったのだろう。


俺はネットでミミズの食べ方を調べてみた。

まず水に浸けて、泥を吐かせる。

そしてお湯で茹でる。


ミミズヲ、ミズニツケテ、ミズニ。


まるで早口言葉のようだ。


他にも蒲焼にして食べたりしてる人もいた。が、醤油も砂糖もみりんもない。


海水で茹でれば、塩分も付くのではないか。

なら水煮一択だ。


『ミミズを水に浸けて泥を吐かせて、海水で水煮にするのがいいと思うよ』


書いていて気持ちの悪くなる文章だ。吐き気がする。でも、そう書くしかない。


しばらくして返事があった。


『火を起こせないし、そもそも鍋がない』

しまった。キララのいる世界には、鍋なんてのんきな物はないのだ。


俺は考えた。答えはこれしか出なかった。


『じゃあ、刺身で』


生で、とは書けなかった。生でミミズを食すなんて。生も刺身も変わらないが、語感の響きが違う。


皿に盛って、ツマを添えれば、イケる気がする。

いや皿もツマもない。イケない。


『わかった』


しばらくして返事が来た。


『食べた』


食べたんだ。


『吐いた』


そりゃ吐くわ。


なぜ俺とキララはLINEでこんな、ぶっとんだ、やり取りをしているのか?


キララは今、現実の世界にいない。

キララがいるのは……


異世界だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る