第30話 怒り


【気弱になっておるな。 いや、と言うよりは捨て鉢で死を望んでおる】


 はあ? おいレヴァ! テメェ、なにを寝言、言ってんだよ!

 俺は絶対に生き延びて、最低でも、もう一回はお姉ちゃんの“寄せて上げて”を見るんだよ!


 そして、そして! 最後は、“ぱふぱふ”も。


 で、できればね……。


【お主の生への渇望は、実は性への渇望から来ていたのか?】


 上手いこと言ったつもりかっ!


【話がずれたな。“死を望んでいる”と言ったのは、お主のことではない。

 目の前の人型の中にいる者の事よ】


 あれっ! いや、どう見ても『やる気満々』に見えるんですけどぉ?


【う~む。 どうやら、あれは戦奴である様子よなぁ】


 鮮度? パーシャル?


【アホウ! 戦奴というのは、要は戦うためだけに生かされている奴隷よ。

 死を持って開放されるしかない哀れな存在だな】


 レヴァ…・・、そりゃ無いだろ。

 何で今、そんな事教えるんだよ。

 唯でさえ恐いってのに、気持ちが折れそうになる。


【ふふん。 それでもやらねばお主は死ぬ。絶望もまた我の好物でなぁ】


 てめぇはいつか必ず、消す!


【いや、無理だな! お主はもう我の力無しに生きていく事はできん。

 さあ殺せ! 哀れな死を望む者を、その望み通りにほふってやるが良い】


 レヴァの言葉に次第に腹が立ってきた。

 こうなりゃ、力に呑み込まれようがどうなろうが知ったことか。


「気にいらねぇ!」

 思わず叫ぶ。


【む、お主、何が言いたい?】


 てめえもあいつらも、全員、糞だ!

 何が“殺せ”だ。何が“死ぬまで戦え”だ!

 こんなのイジメと同じじゃねーか。

 いや、もっと酷ぇ!


 レヴァ!

 人の感情を餌にしてむさぼるテメエは、絶望を見て喜ぶあいつ等の仲間だ。

 目の前の連中も同じだ!

 戦奴だぁ!

 あそこに姿が見えないって事は、中に居るのはさっきの小柄な騎士だろ。

 下手すりゃ、俺より小さな子どもだぞ!


 それを、それを!


【子どもどころか、あれは、】


「黙れよ!!」


 テメエの言葉なんか聞かねぇよ!

 お前は道具だ!

 包丁って道具で人を殺す奴もいるけどな。ありゃ本来、人に美味いモノを喰わせて幸せになってもらう為のモノだ。

 レヴァ! 俺に住み着いた以上、テメエにはきちんとした包丁になってもらう。


 異議は認めねぇ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る