第72話

 薄暗い部屋、夕陽に焼けたオレンジの窓。

 かずき、陽太は荷物を置いた。

「お風呂入るね」

「おう」

 干してあるバスタオルを手にとり、洗濯かごに服を入れ、陽太は風呂場の戸を開く。

 かずきは机に、貰ったクローバーを置き、今日撮った写真をコルクボードに貼り付ける。

 だいぶたまったな……アルバムでも買うか、新しいボードでも買うか。

 そんなことを思いながら、貼ってある写真を眺め少しわらった。 

 誰かといると笑う機会が増えていく。あいつと出会ってから笑顔でいることがかなり増えたな。

 風呂から陽太が上がって、かずきも風呂に入り、それから夕食をとることにした。

「残り物貰えてラッキーだったね」

「だな」

 今日、志乃が作ってくれたお弁当の残りだ。

 晩ご飯を全て食べて、歯を磨き、布団を敷いて寝転がり二人は本を読んでいた。眠氣がやってきた頃に、部屋の電氣を暗くした。

 何も見えなくなった。二人は並んで寝てる。

 深更。

 小さな布団に寝ている方、寝返りを打つ。

 少年は隣で寝てる顔を見た。

「さよならかずき、楽しかった」

 その体は淡くひかる。

 丸い光が、

 ほわり

 ほわり

 と、体から浮かび上がった。

 

 今まで、ありがとう


 宙にあるそれはいつのまにか見えなくなって、

 全ての光がどこかへ消えた後、布団にはぽっかりと空洞ができていた。

 部屋にいるのは一人だけだった。

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