第69話

「わあ、大きいねえ」

「そうでしょ」

 陽太は佳奈の大きくなったお腹を撫でた。

「お腹の中に赤ちゃんいるんだね」

 陽太は自分の腹部に手をおいた。

「不思議よねえ、私の中にもう一人いるんだもの」

 赤いソファで寝そべった、佳奈。

 部屋には生まれてくる子供のための物が置かれている。

「鉄二がさ、最近掃除とかしてくれるようになってね、前とか全然しなかったのに、二人分の成長を実感しているところなの」

 佳奈はさも嬉しそうに笑った。

「大変そうだからな、俺もできることをやってやらないとさ」

 陽太は鉄二の後ろにきて、えらいえらいと頭を撫でた。

 鉄二は黙り、撫でられている。

「鉄二も父親になるのか」

 かずきがいうと、まあなと返す鉄二の顔はほころんだ。

陽太は佳奈の方に戻ってまたお腹に触れた。

「わ! うごいたよ!」

 佳奈は優しくお腹を撫でる。

陽太はわーと言いながら目を輝かす。

「かずきも妊娠したら?」

 と陽太はかずきの方に顔を向け言葉を投げた。

「男はしないんだよ」

「なんで?」

「そういうものなの」

「確か、男は出産の痛みに耐えられないんだよな」と鉄二が言う。

「母親に感謝」とかずきがいう。

「凄いんだね」と陽太は佳奈に言葉をかけた。

 佳奈はニカッと笑顔になって、

「母は強し」

 とそう言った。

 も一度お腹が波打つ。

 中の赤ちゃんも笑っているのだろうか。

「元氣、元氣」

 微笑んだ佳奈。

「どれどれ」と鉄二も佳奈のお腹をさわる。

 微笑むかずきはその様子をカメラで残す。

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