必然の偶然
@maru163
第1話
あの日、なぜあの場所に行こうと思ったのか…。
それは今でもわからない。
だけど今となれば、そうする事が当然だったようにさえ思う。
いつものように目覚めた朝。
俺は目覚めの煙草に火をつけていた。
昨夜少し飲み過ぎたのか、一本吸い終わってもまだ頭がすっきりしなかった。
「…歳だなぁ…」
ふと、自分で呟いて苦笑いした。
ベッドに座り部屋を見渡す。
1人で暮らし始めてもうどれくらいになるのか。
周りの奴らは次々と身を固める中、俺は1人の生活を続けていた。
「結婚しないのか?」
「周りからの信用が違うぞ」
早々に結婚した連中は、顔を合わせる度にそんな事を言っていた。
それでも結婚しようとしない俺に、
「お前はモテるからって選り好みしてたら、誰にも相手にされなくなるぞ」
と、最後にはそんな妬みともたれる言葉を言うようになっていった。
正直なところ、結婚する意味がわからない。
歳も歳だから恋愛はそれなりに経験している。
けれど結婚の意味がよくわからないでいる。
「本当の恋愛を知らないんじゃない?」
仕事仲間でひと回り以上年下の通称チビが言う。
チビは、黙っていれば小柄で可愛らしいのだが、とにかく痛い所をピンポイントで突いてくるため、残念な女扱いされている。
「どういう事?」
「私も結婚してないから偉そうな事言えないけど。
その人と一緒に歳を取りたい、って思えるくらい好きかどうか、じゃないかと思うよ」
なるほど…。
そんな風に考えるものなのか…。
「あくまでも、私の意見だけどね」
そう言ってチビは笑う。
「後、周りに恵まれすぎてることもあるかもね。
何でも言い合える、許しあえる仲間がいるから、取り立てて気持ちの逃げ場所を作る必要がないんじゃないかな。」
気持ちの逃げ場所。
チビと別れた後、その言葉がずっと頭の中から離れなかった。
確かに今まで、逃げ場所を求めた事がなかった。
それは、どんな事であっても自分で解決すべきだと信じていたから。
どんなに辛くても苦しくても、泣き叫びたいほど悲しくても、自分自身の問題だから自分1人で乗り越えるものだと思い込んでいた。
誰かに気持ちを吐き出すなんて、考えたこともなかった…
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