「レベルが上がらない雑魚」と追放された最弱無敗の英雄~第三王女と共に固有魔法【スキル回収】を駆使してレベル1から成り上がる。

煙雨

第1話 追放

「今日をもってお前を追放する」


 A級クエストを終わらせた俺たち---Sランクパーティは冒険者ギルドへ戻ってきた。そんな時、パーティリーダーであるクルト・シャミールから追放を言い渡された。


「う、嘘だよな?」

「嘘なわけないだろ。お前みたいな雑魚はいらないんだよ」


(なんで......)


 今の状況が理解できず、頭が真っ白になる。すると、嘲笑うような表情で俺に言った。


「わかっていない顔をしているな、ギルバード」

「わかるわけないだろ」


 先ほどまで一緒にクエストを行っていた仲間から突然言われても、理由なんて思い浮かぶわけがない。


「自分のレベルを思い出してみろ」

「......。レベル1だけど」

「そう。お前はレベル1だ。お前を抜いたSランクパーティの平均レベルは30後半。お前はお荷物なんだよ」

「お荷物って。俺はきちんと仕事はしていただろ」


 クルトの言う通り俺のレベルは1だけど、戦闘面で迷惑をかけたことなんて一つもない。


「仕事ね。それはお前がやっていたと錯覚しているだけだろ?」

「え? それってどう言う意味だよ」


 俺は食い気味で尋ねる。すると、パーティメンバーの一人である聖魔女---レイラ・アックルが言った。


「ギルバート、もう認めなさい。あなたは私たちの功績を奪っていただけだって」

「は?」


 レイラの言っている意味が理解できなかった。俺がみんなの功績を奪っていた? そんなわけない。だって俺はきちんとみんなと同等の数、モンスターを倒していたから。

 

 すると、騎士---ランドルフ・ワックナーがため息をつきながら言う。


「俺、見ちまったんだよ。俺たちが弱らせたモンスターをことごとく倒して行くお前を」

「たまたまだろ。俺だってきちんとモンスターを倒していた」

「嘘をつくな!!」


 クルトは机を叩きながら怒鳴ると、冒険者は俺たちに注目が集まる。


「お前が使っている技はなんだ? 火玉ファイアーボール風切エア・カッターばかりの初級魔法だろ? それに加えて前線ではまともに戦うこともできない。そんな奴がいっちょ前にモンスターを倒していたなんて信じられるわけがないだろ」

「いや、でも実際に倒していたじゃないか」


 すると、来るとはため息をつきながら言った。


「そうだな。でもお前の固有魔法【スキル回収】だっけ? 結局、スキルを回収できたのは火玉ファイアーボール風切エア・カッターだけ。スキルは強そうなのに扱う奴がこんなに雑魚だと、固有魔法も可哀想だな」

「......」


 俺だってどうやって回収するか知りたいさ。クルトの言う通り俺は、スキル回収できたのは初級魔法しかないし、前線で戦うこともできない。だからこそ、魔法の威力や命中の精度を上げてモンスターを倒していたんだ。


「は~。じゃあそれは良いさ。もう一つ理由はある。お前はなんでレベルが上がらない?」

「そ、それは......」


 自分でも分からないことを聞かれて、黙ってしまう。


「出だしのレベルは一緒だったのに今だとこのありさま。そんな奴を仲間にしている意味なんてあるのか? はっきり言って、パーティの汚点。雑魚はお荷物なんだよ」

「......。でも」

「でもじゃねーよ。お前はもうこのパーティにはいらない。出て行け」

「ちょっと待ってくれよ!! チャンスをくれ。次の戦闘で実力を示すから」


 今は信用してもらえなくても、実際に見てもらえればと思った。だが、そんな甘い考えはすぐに消えた。


「お前にチャンスを与える余裕なんてない。それにこの前、俺が冒険者ギルドには話を通しておいたから、お前は今日から最低ランクのFから始めろよ」

「な、なんで......」

「そんなの決まっているだろ。お前が雑魚だからだよ。レベル1の雑魚は最低ランクから始めるのがお似合いだよ」

「な、なぁ。本当に戻ることはできないのか?」


 俺は最後の力を振り絞り、尋ねた。


「できない。てか、この状況で戻りたいとかお前バカだろ。なぁ!!」


 クルトはここにいる冒険者たちにそう言うと、全員が笑いだした。


「ほら見ろ。ここにいる冒険者の皆さんもこう思っている。早く出て行け」

「......クソ。覚えとけよ」


 俺はボソッとそう言いながら、この場から立ち去って行った。その時、クルトたち全員の笑い声が鳴りやむことは無かった。


 この時の俺は、固有魔法【スキル回収】の力をきちんと理解していなかった。この力が、世界にどれだけ影響を及ぼす力だったのか。

 そして、クルトは主人公が消えたことによって、徐々にモンスターを倒すことが出来なくなっていき、没落して行くことを。



❇️


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