化者狩りの夜

瀬古かもめ

第1話 失踪

「これで3件目か・・・・ヤツらの仕業で間違いなさそうだ。」


街の人間が寝静まった頃、電球が切れかかった薄暗い一室に、男が一人。

彼の名は『ノクト』


人に化け、人に紛れ、人を食う化者ケモノ退治を生業とする『化者狩ケモノがり』である。


傍らの机に置いた記事の一面には、とある村の失踪事件について書いてあった。


『神隠しか!?今月で3人目の失踪者』


「呑気なものだな。このまま放っておけば村民全員が失踪することになるというのに・・・いや、ではないか。」


化者ケモノ

人に化け、人の社会に溶け込み、人を捕食する怪物。どこから来たのか、いつ生まれたのか誰にもわかっていない。


その存在が公になっていないのは奴らの擬態カモフラージュが巧妙で狡猾であることの証明である。


当然、そんなことが公になってしまえば人々はこれまでの暖かな営みをすべて失ってしまう。

隣人を疑い、愛する妻や夫を疑い、自分の子ですら疑ってしまう。


疑いが疑いを呼び、果てには殺し合ってしまう。人間は弱い生き物だから。


「(この頻度での捕食となると今回は単体ではないのか?ただ、妙だな・・・ヤツらは基本的に群れないし、非常時以外にこんなあからさまに人を襲わない。こんな風に騒がれれば、オレたちに見つかるリスクもあがるからな。)」


化者ケモノ』の完璧とも言える擬態カモフラージュのわずかな痕跡を見つけ、闇に巣食う怪物を退治する専門家組織


化者狩ケモノがり』


本来ならば化者狩ケモノがりが動くにはからの指令を待たねばならないのだが、彼は今回はすでに動いていた。

組織のルールに背いても、動かなければならない理由があった。


今、世間を騒がせている「とある村」とは彼の故郷なのだから。


「オレの村はオレが守る。上がなんと言おうと。」


彼は部屋を出た。


真っ暗な街を歩く、愛すべき故郷を守るために。


憎きヤツらを殺すために。

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