女神のような女性から魔王を倒せと異世界に転移させられた山崎某、血塗れになりながら戦っています
タカハシあん
第1話 *異世界へ転移*
「ようこそいらっしゃいました、山崎某さん」
え? はぁ? なんだ、いったい?
とっとこ物産さんに営業にきたはずなのに、玄関を潜ったら会議室っぽいところに入っていた。え? 意識飛んでた?
「お座りください」
会議室っぽいところにいたのは、なにかキラキラした女性で、ギリシャ神話の女神のような衣装を纏っていた。コスプレですか?
なにがなにやらわからないが、とっとこ物産さんの方という可能性が一パーセントくらいはあるかもしれない。取引相手に失礼があってはならないと、言われた通り、部屋の中央にあるパイプ椅子に座った。
「山崎某さん。年齢は三十歳。独身。特異体質持ち。今は一人暮らし。株式会社あらよいに勤務。現在、主任ですね」
「え、あ、はい、そうですが、あの、これはいったい……」
オレ、面接会場に迷い込んだ? 転職なんて考えてないんだけど。履歴書書いた覚えもないし。
「わたしは、リミットと申します」
某と書いてそれがしと読むオレが言えたことじゃないが、名前がリミットって、なかなか個性的だこと。ブレイクとか足したら格好いいのに。
「山崎某です。よろしくお願いします」
相手はオレを知っているようだが、名乗られたら名乗り返すのが社会の常識。席を立って一礼をした。
「これは面接ではないのでお座りください」
じゃあ、これはなんなんですか?
「山崎某さん。あなたは異世界にいって魔王を倒してもらいます。これは強制。あなたに拒否権はありません」
……はい?
「とは言え、やる気を出していただかないとこちらも困りますので、報酬を用意しました」
と、目の前にモニターが現れ、そこに姉の娘、姪の愛華が映っていた。
「あなたが魔王軍の者を倒せばその命の0.01パーセントをこの子に与えます」
0.01パーセントって、ほぼないと同じじゃね?
「魔王は数千万の魔物を配下にしており、魔物にも命の差があります。配下にしている黒竜を一匹倒せば軽く病気が完治して五十年は余裕で生きられるでしょう。魔王なら世界一の長寿も夢ではありませんが、さすがに百五十年も生きたら騒がれるでしょうから、百歳分を超えたら某さんに回すとしましょう」
つまり、魔王軍の魔物を倒せば倒すほど愛華は生きられるということか……。
「はい。その通りです」
と、会議室っぽいところが一変して、スーパーだかホームセンターだかみたいなところになった。
「準備金として一千万を与えます。あと、緊急避難部屋。通称セフティーホームを与えます。ワンルームしかありませんが、魔物から取れる魔石を玄関にあるボックスに入れたらイメージ通りに拡張できます。あなたが仲間と認めた方なら最大五人まで入室できるようにしておきます。一人は寂しいでしょうからね」
最初は冷たい女性かと思ったら意外にも優しい女性でした。女神か?
「あと、そのスーツに強化改造しました。あなたの全力にも耐えられますし、ランドリーボックスに入れれば修復や洗浄もしてくれます。ポケットも十倍の容量が入れられるようにもしました」
至れり尽くせりだな。オレはあなたを女神と認定します。
「これは大事なことです。あなたには普通ではない力がありますが、人とです。大きな怪我をすれば死ぬこともある。魔王軍は魔法と言う超常の力を使う者もいます。伝説の武具のようなものは与えられません。どうか慎重に動いてください」
「まあ、三十歳から魔王を倒せとか正直辛いですが、これまでも辛い人生でした。オレの命で姪っ子が救われるならそれで充分ですよ」
この力のせいで辛いことが多々あり、彼女も作れもしなかった。姪っ子を救えるならこの力にも意味があったと思えるさ。
「じゃあ、準備金を使わせてもらいます」
おそらくもう帰ってこれないのだろうから、タバコは必須だ。こんな体、いつ壊れても構わないと吸い始めたら、今ではすっかりヘビースモーカーだ。
禁煙禁煙でうるさい世の中になり、一箱六百円になっても辞められない。異世界なら誰憚ることなく吸えるだろうよ。
……この尋常じゃない体のお陰で肺は未だに綺麗なままなんだよね……。
「押し入れに要れておけば劣化することはありません」
と女神のようなリミット様に言われて百万円分のタバコを買いました。あと、ライターも。
一千万円とは凄まじいもので、必要なものを買っていったら押し入れどころか部屋一杯になって玄関に立つのもやっと。トイレや風呂にもいけなかった。
これは早々に部屋を拡張しないと外で生活することになりそうだ。
「山崎某さん。あなたに強制したわたしが言えたことではありませんが、命を大切にしてください。あなたが向かう世界にはあなたと同じ世界から送られた者が数人います。なにかあればその方々を探して頼ってください。あなたが向かう先には別の目的で送られた者がいて、あなたとは違うサポートを受けておりますので」
オレみたいな特異体質のヤツがいるのか?
「……ある意味、特異な方ですが、普通の男性です」
なんだろう。今の間は? 隠れ特異体質なのか?
「山崎某さん。あなたは特異ですが、一人でできることは多くはありません。信頼できる仲間を集いなさい。あなたの力と成りますから。では、あなたの無事と活躍を祈っております──」
と、視界がブレ、オレは異世界に転移させられたのであった。
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近況ノートに書いたヤツ。七話しか書いてないものです。
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