第45話 そうだ! 王都へ行こう!
※これまでの話を読み返していたら、すでにドリーの革を使って革ベストを作っていました。なので、その辺りを修正し忘れていた小夜との会話もも追加しました。
「あ! 忘れてた……」
「どうした、恒?」
「ほら、最初にここに来た時にさ……」
恒は不意に思い出したことがあったのか、急に大きな声を出すと明良にどうしたのかと言われ、忘れていたことを話し出す。
それは、最初にこの町『ラニナ』に来た時に冒険者ギルドで買い取ってもらおうと思ったが、ギルマスに「ここでは買い取れない」と断られたモノがあったことだ。
「あ~あったね。そんなことが。で、ソレをどうするの?」
「いや、売れるのなら王都まで行ってオークションに出すのもいいんじゃないかなって。それに王都くらい大きな街ならさ、武器や防具に加工してくれる人がいるかも知れないじゃん」
「え? でも、もうキールさんに革ベストと解体用ナイフにショートソードまで作ってもらったのに?」
「あ、うん。そうだけどさ。それはキールさんが今の自分に出来る精一杯っていうからさ。だから、この際に王都で一揃い作ってもらうのもいいかなと思ってさ。それに……」
「それに?」
「もう、明良も毛がちょっと生えた程度になっただろうから、ついでに武器も少し良い物が欲しいんじゃないかなって思ってね」
「恒! もう、勘弁してくれよ。でも、確かに新しいのは欲しいかもな」
「そうね。私も革ベストがちょっとキツく感じるようになったし、いいかも!」
「私は……」
「久美はまだまだじゃの」
「うるさい! 小夜も変わらないじゃないの!」
「そうじゃの。確かに変わりないが、それは妾が恒の伴侶という位置付けが変わらないのも一緒じゃからの。ほぉ~ほほほ」
「キ~くやしい!」
「小夜! そのくらいにしてあげて」
「何よ! 由香まで私を可哀想な目で見ないでよ!」
「まあ、そこはほら。強者としての余裕かな。ふふふ」
「おい!」
「「「ゴメンなさい……」」」
由香が苦しそうに自分の胸を持ち上げるのを見て久美が何かを言いたそうに自分のつま先を見る。本人はつま先を見たい訳ではないのだが、そういうつもりでなくても遮る物がないためにつま先が見えてしまうのだ。そして、その様子に気付いた小夜が久美を揶揄うように言うのを由香が止めるが、その由香にも久美は噛みついてしまうのを恒に窘められる。
「でも
「え~でもドリーに包まれるのはちょっとな~」
「由香、いくらなんでもそれはないよ思うよ。でしょ、ドリー?」
「よし、ワシのはユカには不要らしい。ワタル、それで頼むぞ」
「うん、いいよ」
「え? ちょっと、待ってよ! 私のはどうなるの?」
「そりゃ、
「なら?」
「『ぬののふく』じゃない?」
「え? そんなの初期装備品じゃないの!」
「ふふふ、皆が
「久美……何がそんなに面白いのかな?」
「だって……『ぬののふく』だよ。ぷっ」
「ぐぬぬ」
久美は笑いのツボに入ってしまったのか、笑いが止まらなくなっている。そして、由香はその横で不機嫌そうにしているが、恒が嘆息すると由香の肩をポンと叩く。
「由香、このままだと本当に『ぬののふく』になるぞ。なら、どうすればいいか。分かるよな」
「……分かったわよ。ドリー、ごめんなさい」
「お、おお。分かればいい」
不承不承という態度だが、珍しくドリーに頭を下げる由香を見てドリーも溜飲が下がるというものだ。
「じゃあ、その島に行く前に王都に寄る訳だ」
「うん、そうなるね」
「でもよ、オークションってそんなにいつも開催されているのか?」
「問題はそこだよね。結局、王都に行かないことには何も分からないってことが分かっただけでもいいんじゃない」
「まあ、そうか」
「ねえ、目的地が変わったのはいいんだけどさ」
「ん? 何かあるの?」
「あるわよ! 大ありよ!」
「お、おお……」
先ずは王都に行くことに変更になったが、誰も文句はなかったのだが由香だけが憤慨している。なので、その由香に何が問題なのかを聞いてみる。
「あのね、王都って地図だとここでしょ」
「まあ、そうだな」
「で、ここまで歩くの?」
「「「あ……」」」
由香が何を言いたいのか恒達は分かった。地図の上では王都まではいくつかの山を越えて行くのだが、どう見ても遠い。簡略化された地図なので縮尺はいい加減だと思うのだが、それでも遠いことだけは分かった。なので、後でギルマスに確認するついでに馬車のことも相談しようと言うことになった。
「なんか、出るってなってからやることが増えた気がするんだが」
「ホント、今日中に出られるのかな?」
「そうだよね。もう挨拶は済ませたもんね」
「そうならないようにするんでしょ。さ、行くよ」
「「「は~い!」」」
資料室を出た恒達は挨拶がてらにギルマスの執務室を訪れる。
「お、そうか。今日出るんだったな。で、俺の所に挨拶に来てくれたって訳か?」
「まあ、それもあるけどさ。ちょっと聞きたいことがあってね」
「聞きたいこと?」
「うん、ほら、最初に来た時に俺が持っているモノはここじゃ引き取れないって言ってたじゃん」
「ああ、アレな。そうだな、確かに言ったな。王都のオークションにでも……あ! そういうことか。じゃあ。次は王都に行くんだな」
「うん、そう。そのつもり。で、聞きたいことがいくつかあるんだけど」
「おお、いいぞ」
「じゃ……」
恒が全部を言わなくても恒が言いたいことを理解したギルマスは身を乗り出して話を聞く体勢になる。そして恒は気になっていた王都のオークションに関すること、王都までの行程、馬車を使いたいことなどを話す。
「王都のオークションのことは俺もよくは知らない。が、だ。王都の冒険者ギルドに紹介状を書いてやろう。それを持って行けば対応はしてくれるハズだ」
「助かります」
「後は馬車だな。それなら、リリーに案内させるから、行ってくるがいい。その間に紹介状は用意しておくから」
「すまんな。ギルマス」
「いいって、でもドリーがいなくなるのは淋しいがな」
「淋しいって、年単位で会ってないのに?」
「「そういうものなんだ!」」
「へ、へ~」
とりあえず気になっていたことは解決しそうな感じになったところで、ギルマスが席を立つと部屋の扉を開け、リリーを呼び出す。
「おい、リリーちょっと来てくれ」
「なんですか、忙しいんですよ」
「いいから、来い!」
「もう!」
声の感じからリリーさんがちょっとだけ機嫌が悪そうに執務室に入ってくるが、俺達を認めると顔が少しだけ綻ぶ。
「ユカじゃない。久しぶり! ほら、これどう? 新作なのよ!」
「ちょ、ちょっとリリー!」
「あ、そうね……ほほほ」
由香を見つけたリリーは自分の胸元をはだけさせながら由香に対し中の物を見せようとして由香に止められる。
「で、ギルマス。用事ってのはユカ達に関することなの」
「ああ、そうだ。こいつらもとうとう街を出るんでな。その為の馬車を紹介してやってくれ」
「え~ユカ、行っちゃうんだ。なんかショック……」
「なんかゴメン」
「もっと新しいデザインとか教えて欲しかったのに……ほら、前教えてくれたお尻が丸見えのヤツとか「リリー!」……あ、もしかして秘密だった」
「もう、いいから! 馬車を紹介して!」
「あ、そうね。じゃあ、今から行く?」
「「「は~い!」」」
リリーに返事をすると恒達は執務室を出て馬車を求めに行くのだった。
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