第37話 パーティ登録出来ませんでした
回収した賊のお宝に関してはギルドに一任することにした恒は小夜と共に訓練場へと向かう。
「アイツら、ちゃんとやっているかな」
「そりゃ、やっているじゃろ」
「そうであって欲しいよね」
恒達が訓練場に着き、ドリー達を探すと訓練場のほぼ真ん中で討ち合っている明良達を見付ける。
見た感じは以前に見た時とそう変わっていないようにも見えるが、明良達三人のコンビネーションは格段に上がっているように見える。
「ほう……ちょっとは連携というモノを考えるようになったようじゃな」
「小夜もそう思う?」
「ああ、以前とは明らかに違うな」
明良がドリーに対し仕掛ける前に久美が明良達に対し支援魔法を掛け、由香はドリーに対し目くらましの火球を放つ。その火球を追い掛ける様に明良はドリーに向かっていく。
ドリーはそんな三人の様子に感心しながらも、向かってくる火球と明良に対し構える。
「火球一つで目くらましになると思うなよ。フン!」
「もらったぁ!」
「甘い!」
「そっちこそ……『
ドリーが片手で火球を振り払うと、その間隙をついて明良が振りかぶる。
が、そんなことは予想済みとばかりにドリーが剣を構えて防ごうとするが、そこに久美の『呪縛』で動きを止められる。
「ふむ。少しは考えているようだが……フン! この程度じゃ効かん!」
「あ……そんなぁ……」
ドリーは久美の『呪縛』をものともせずに振り払い、明良に対し構え直す。
「もう、だからちゃんと強めにって言ったでしょ! 『火球』×五。それと『水球』×十!」
ドリーに向かって由香が放った火球に水球が迫ってくる。
「だから、こんなモノはワシには効かん……と。ん?」
ドリーが火球を剣で切ろうとしたところで、火球に対し水球がぶつかり辺り一面に水蒸気が立ち込める。
「くっ……」
「もらったぁ!」
水蒸気に視界を遮られたドリーが戸惑っているのをチャンスと捉えた明良が剣を振り下ろす。
「だから、魔力で簡単に居場所は分かると……何度言えば分かるんだ。ほい!」
「がっ……」
明良が振り下ろした剣を軽くいなしたドリーが、そのまま明良の脇腹に木剣を食い込ませる。
「まあ、今回は及第点をやってもいいぞ。じゃあ、治療を頼むな」
「はい……明良、大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ。ちぇ、上手くいったと思ったのにな」
「確かにね。でも、魔力で感知されるのを忘れてたわね」
「「確かに……」」
「お前達、これで基礎訓練は修了だ。明日からは依頼を受けられるな」
「「「はい!」」」
明良達はドリーから基礎訓練修了と聞き、三人で喜ぶ。
「じゃあ、カウンターで手続きをしてくるがいい」
「「「分かった!」」」
「お疲れさん」
「ようやくじゃな」
「恒! 来てたのか」
「恒、見てた?」
「私達もやっと、依頼を受けられるようになるのよ」
「うん、そうみたいだね」
「ふふふ、早うせんと妾達には追いつくのが難しくなるぞ」
「そうだぞ。早く済ませて来い!」
「「「は~い」」」
ドリーの言葉に従い、恒も一緒に明良達と受付へと向かう。
「「「お願いします!」」」
「はい。少々お待ち下さい」
リズが明良達の冒険者登録の手続きをしていると、奧からギルマスがのそりとやってくる。
「お前達はワタルとパーティを組むんだろ。なら、その手続きも済ませてやれ。ドリーはどうする?」
「そうだな。ワシも一緒に登録してくれ」
「分かりました。では、ドリー様、ワタル様、サヨ様のギルドカードをお預かりしてよろしいですか」
「ああ」
「はい」
「大事に扱えよ」
「はい、確かに。それでパーティの名前はどうしますか?」
リズがパーティ名をどうするかと言った所で、皆の視線が恒に注目する。
「え? 俺が決めるの?」
「だって、リーダーだし」
「ちょ、ちょっと待てよ明良。普通、リーダーは年長者がやるものじゃないの?」
「ワシか? ワシは、そういう面倒なことはイヤだぞ。それにお前が動かないことには始まらないことが多いんだろ? なら、お前が適任だ」
「そんな……由香や久美はそれでいいのか?」
「いいわよ。なんなら、一生着いて行くし」
「わ、私もお願いします!」
「なんじゃ、この小娘らは!」
明良達からリーダーを任され、不承不承承諾するとリズからパーティ名を早くと催促される。
「リーダーはワタル様で登録しました。後は、パーティ名だけです」
「あの……少し時間を頂けますか?」
「いいですけど、パーティ名が決まるまではパーティでの依頼は受けられませんよ?」
「はい。ちゃんと決めてきますので……」
「では、一旦保留しておきます」
「すみません」
受付から離れ、取り敢えず一服しようとギルドに併設されている酒場の方へと移動する。
「で、名前は決めたのか?」
「明良、そんな急に出てくる訳ないだろ。いいから、皆も考えて」
「しょうがないな。なら、『異世界ハンター』で」
「「「却下!」」」
「なんでだよ!」
「あんた、バカじゃないの? あの国から逃げ出したのに何を宣伝するような名前にするのよ」
「そうですよ。ここは『勇者ワタル』で」
「「「却下!」」」
「久美、私がさっき言ってたのを横で聞いててソレなの?」
「え? ダメなの」
「ダメに決まっているでしょ。よりによって『勇者』を公言するなんて、バカとしか言いようがないわ」
「じゃあ、由香はどうなのよ!」
「私……私は『
「「「却下!」」」
「なんでよ! どこも問題ないじゃないの!」
「厨二臭い」
「薔薇ってのが二重三重にイヤだ」
「そうね。どこにも薔薇の雰囲気がないものね」
「トゲトゲしいのはいるがな」
「……」
そんなこんなでパーティ名は一向に決まる気配がない。
「ほら、恒も黙ってないでなんか提案しなさいよ」
「それが出来ないから……」
「いいから、厨二病とか言わないから、ほら!」
「……じゃあ、言うね」
「「「ああ」」」
恒は一度、深呼吸してから、考えたパーティ名を口にする。
「『
「「「……」」」
「え? どうしたの? 何か言ってよ」
「期待していたのに」
「そうね。ちょっと残念ね」
「なんだか、スベりましたね」
「ワタル、ワシもそれはないと思うぞ」
「そうじゃな。妾もそれはないと思う。まあ、そんな残念なところもいいのじゃ」
「そんな~」
結局、宿に帰ってからも話し合いが続き、ミリーがふと口にした『
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