第20話 どうも、腑に落ちないんだけど?

ミモネからの話を聞き終わったところで恒には腑に落ちないことがあった。

「ねえ、ミモネ」

『何?』

「いやね、その話だと俺って関係なくない?」

「そうだな。どこにも恒の成分がないな」

「そうね、言われてみればどこにもないわ」

「ねえ、ミモネちゃん。私には本当に恒が世界の破滅に関わる因子ファクターとは思えないんだけど?」

『そうなの。私もそう思って、あの女神に聞いたんだけど、まだちゃんと分かってないみたいなの』

「え? って、ことはミリーのことは世界破滅の要因の一つにしかすぎないってこと?」

『そうみたいなの。まだ私にも女神にも詳しいことは分かってないの。ごめんなさいなの』

恒はミモネの話を聞いてもどこにも自分が一ミリどころか一ミクロンも関わりがあるとは思えなかったので、ならひょっとしたら自分は本当に世界の破滅に関係ないんじゃないかと思っていたが、ミモネからは実はと言われて、まだ余談は許されない状況であるということには変わりないようだ。

「ねえ、ミモネ。ドリーが死ぬ以外に何か世界の破滅に起因することはないの?」

『ワタル。さっきも言った通りなの。まだ私達には何も分かってないの。今回のミリーのこともワタルがドリーと会ったことで分かったことなの。だから、ワタルにはこの調子で、この世界を旅して回ってもらえれば、もっと原因がハッキリすると思うの』

「そうか。なら、早いとこ次の目的地を決めないとな」

「それで、いつかは南半球でミリーの父親探しか」

「そうだね。でも、明良。その前にミリーの母親を探す方が先だと思うよ」

「由香。それはなんで?」

「だって、そのモリーってのは最古龍なんでしょ? なら、寿命なんて考えるのも馬鹿らしい存在じゃない。なら、何時死ぬか分からない母親の方が先でしょ」

「「「お~!」」」

『パチパチパチ!』

由香のもっともな意見に恒達は思わず拍手する。

「じゃあ、次はミリーの母親探しか。女将さんに確認しないとな」

「明良。その必要はないよ」

「なんでだ?」

恒はどこか得意気に胸を張って浮かんでいるミモネを指差す。

そして、その様子に明良もなんとなくだが得心する。

「なるほど。さしずめ生体レーダーってところね」

『なんか褒められていないってことだけは分かるの』

ミモネは久美に言われたことに対し、褒められていないってことだけは分かったが、ここで不満を言ってもしょうがないと次の目的地を恒達に告げる。

「そっか、なら出来るだけ早く基礎訓練を終わらせて、依頼をいくつか熟して魔物に対しての戦闘にもなれないとね」

「戦闘か……」

「もう、恒は慣れたのよね」

「そう言えば、恒はもうゴブリンスレイヤーだった」

「「「ズルい!」」」

「いや、それを俺に言われても……」

「そうだ。ワタルをそう責めるな。それに基礎訓練ならワシとギルマスがちゃんと相手するから安心しろ」

「「「……」」」

「なんだ? 不満か?」

次の目的地を目指す為には基礎訓練を早めに終わらせ、道中の負担を軽減する為にも四人それぞれが魔物との戦闘が行えるようにならないといけない。

そして、そのことを恒から言われたことで戦闘経験のない明良達三人は、すでに戦闘経験済みの恒に対しズルいと言う。

そしてそんな三人にドリーから戦闘訓練あるのみだなと告げられる。

「結局はそこか……」

「私、どうすればいいのよ? 何が得意かなんて分からないのに」

「私も……鑑定される前に逃げちゃったからね」

「それなら、分かるよ。明良は剣に特化で、由香は攻撃魔法、久美は支援系の魔法ね」

「「「え?」」」

「何? 俺が鑑定を使えるのは知っているんじゃないの?」

「いや、それはそうだけど……」

「やりぃ! 攻撃魔法か! じゃんじゃんぶちかませばいいだけだから、私向きね」

「私は支援系か……うん、頑張る!」

「だが、何をするにも基礎的な体力と最低限の身を守るだけの攻撃力と防御力は必要だからな」

「「「え~聞いてないヨ~」」」

「聞いてなくても、備えておかないと死ぬのは自分だからな。それだけは肝に銘じておいた方がいいぞ」

「「「は~い……」」」


一通りのことをミモネから聞けたことで、ドリーがこれで話は終わりだなと恒達の部屋から出て行くと、由香達もそれに続いて出ていく。

「じゃあ、また明日ね」

「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


由香達がいなくなった部屋で恒と明良の二人だけになると明良が恒に話しかける。

「それで恒はどっちにするんだ?」

「どっちって?」

恒は明良の質問の意図が分からずに明良に聞き返す。

「どっちって、お前。そりゃ、由香と久美のどっちにするかって話だよ」

「だから、なんでそういう話になるの?」

「なんでって、お前……本気で言っているのか?」

「本気って?」

明良の問い掛けに恒は明良が何を言いたいのか分からずに聞き返す。そして、そんな恒の態度に嘘がないということが分かっただけでもいいかと思い、当分の間は何もないだろうと安堵する。

「まあ、いい。お前がそういう気持ちだってことが知れただけでも、少し楽になったよ。まだ異世界を回ってもいないのに男女関係でドロドロなのはイヤだからな」

「明良も何を言ってるの? 俺達まだ十六だよ」

「お前は……十六だからこそだろ! もういいよ」

恒は恒で、自分達はまだ子供なのに恋愛とかそういうのはないよと明良に言うが、明良は明良でと強調するが、恒には上手く伝わらないようで明良は話を切り上げようとするが、恒からは逆に明良の方が大変だと切り替えされる。

「でもさ、そういうことなら明良も大変じゃないの」

「俺が? なんでだ?」

「だって、女将さんがミリーに言ってただろ? 『いいの捕まえたね』って」

「え?」

恒の言うことに今度は明良が意味が分からないと言う顔になる。そして次に恒が言ったことで驚愕する。

「だから、明良は女将さんにミリーのお婿さん候補に認定されたみたいだよ」

「いや、ちょっと待て! なんでそうなるんだ? 俺はミリーに対して何も約束とかしてないぞ」

「そんなことはないでしょ。ほら、女将に『ミリーを隅々まで洗った』って」

「ああ、確かにしたし、女将さんにも言った。でも、それは親戚の子供に対するのと同じだろ!」

そんな明良の言い訳とも言える内容に恒は『ハァ~』と嘆息すると明良に言い含めるように話す。

「明良、ここは異世界だよ。何が婚約の決め手になるか分からない場所だよ」

「でも、恒。それならお前だってそうなっていた可能性だってあるじゃないか。風呂に入れたのはお前が最初なんだから」

「ん~微妙なところだけど、俺は着替えを見守っていた程度で、お互いに素っ裸の状態で相手をしていたのは明良だけだからね。ドリーもその対象になるけど、一応父親ってことになっているから、扱いとしてはセーフだね」

「いやいやいや、どう考えてもそれはおかしいだろ」

明良は納得がいかずにそれなら恒だって同罪じゃないかと言い張るが、その後に続くと言うことを強調されると、明良も言い訳出来なくなるが、それでもそれはおかしいと言い張る。

「そうだよね。俺も女将から言われるまでは意識してなかったけど、こっちの世界でのことだからね。こればっかりはしょうがないよ」

「いやいやいや、ダメだろ。ミリーは何歳いくつだと思っているんだ?」

「それは前の世界での話でしょ。こっちの世界の貴族なら生まれた瞬間に婚約者が決まってもおかしくないし、十六、十七で出産して当たり前の世界じゃないかな。でも、俺は明良が手を出さないことを信じているからね」

「当たり前だ!」

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