第18話 まずはひとっ風呂浴びてから

出来上がったばかりの風呂に入るため、恒達は男女それぞれに分かれて脱衣場へと入る。

「ねえ、わがままだとは分かっているんだけどさ……」

「由香? どうしたの?」

「うん、あのね。女湯の方に内鍵が欲しいの! 後、男女が分かる様に暖簾か何かで分かる様にして欲しい」

「あ~なるほどね。暖簾は後にして。扉に『男湯』『女湯』を書けばいいかな。今は、書くものもないし……」

恒はそう言うと地面に手を着き、『造形モデリング』『硬化』を唱えると、そこにはそれぞれ『男湯』『女湯』と現地の言葉で書かれた文字がレリーフとして存在していた。

「じゃあ、これをそれぞれの扉に掛けて。男湯は明良、お願いね」

「あいよ」

明良が恒から『男湯』のレリーフを受け取ると扉に打ち付ける。そして、恒は女湯の扉に『女湯』と書かれたレリーフを打ち付け、内鍵を取り付けると満足そうに頷き、由香達に安心して入るように勧める……が、由香と久美も恥ずかしそうに体をくねらせながら、恒に何かを言いたいのだけど言い出せないという雰囲気を醸し出す。

「まだ、何か足りない物が?」

「う、うん。足りないと言えば、足りないんだけど……もう、無理! 久美、お願い!」

「え! 私? 私だって、ちょっと……」

と、二人が言い淀んでいると、明良が戻ってきて恒にお願いする。

「忘れてた! 恒。新しい死パンツを作ってくれ」

「うん、いいよ「「それ、私達のもお願い!」」……あ、ああ。分かったよ」

恒は由香達が言いづらかったことが分かると、前にコピーしていた由香の下着を出す。

「はい。これが由香のね」

「ありがとう……でも、ちょっと不思議な感じだわ」

「イヤなら、別に無理し「い、イヤじゃないわよ。ただ、ちょっとね」な……あ、そう」

恒の手に載せられている自分の下着を受け取ると、これを恒が作ったのかと思うと不思議な感じがすると思わず呟いた由香に対し、そんなに自分が作ったのがイヤならと取り返そうとする恒に対し、由香は慌てて自分の方に引き寄せるとイヤじゃないからとだけ告げる。そして、それを見ていた久美は自分の下着がないと恒に不満を漏らす。

「ねえ、私のは?」

「ああ、久美のは記憶してないから、触らせてもらわないと無理なんだけど……いいかな?」

「え~聞いてない! そんなの無理!」

由香のは以前にリリーが騒いだときに記憶したから作れるけど、久美のはまだ記憶してないから、触らせてもらわないと複写出来ないと言うと、久美はそんな話は聞いてないと慌てる。そして、そんな久美を見て面白いことを思い付いたとばかりに由香がニヤつくと久美に声を掛ける。

「久美。ちょっと……」

「何よ。由香」

「はい、今の内よ! 恒」

「分かった。じゃあ、『複写』からの『クリーン』っで、はい。どうぞ」

「あ、ありがとう」

久美を正面から抱きしめた由香が今の内と恒に言い、それを見て由香の思惑を理解した恒が久美の体を触り、下着の複製を行うとそれを久美に渡す。

恒の手の上にあるそれを久美はお礼を言ってからパパッと取り上げると、そのまま脱衣室へと駆け込む。

「あ~あ、もう。じゃあ、恒またあとでね」

「はいはい。じゃあ、ごゆっくり」

「うん」

恒も男湯の方へと向かうと、ゆっくり風呂に浸かろうと自分が着ていた服を脱ぎ、作り付けの棚の上に置く。

「ここでぬげばいいの?」

「ああ、そうだよ。自分のはまとめておいてね」

「うん、わかった!」

「あ! お風呂場で走ったらダメだよ!」

「うん、わかった!」

「随分、扱いが慣れているな」

「うわっ! ドリー驚かさないでよ」

「すまんすまん。でも、よくこんなの作ったな」

「ほぼ、明良のわがままだけどね。でも、俺も入りたかったし」

「そうか。じゃあ、入らせてもらうぞ」

「どうぞ」


脱いだ服を纏めて、浴室に入ると明良がミリーを隣に座らせて湯舟に浸かっていた。

「おう、恒。遅かったな」

「おそかったな!」

明良とミリーに軽く手を上げ返事をすると恒とドリーは掛け湯をした後にゆっくりと湯舟に浸かり「「あぁ~」」と思わず声が出る二人にミリーが「へんなの~」と笑い、明良も「そうだね~」と調子を合わせる。

「アキラがミリーの面倒を見てくれてたのか。済まんな」

「いいよ。小さい子の扱いは親戚の子で慣れているからさ」

「そうか。いや、ワシは小さい子を相手にしたことがなくてな。さっきも女将からミリーの世話を任されて困っていたところで、お前らが何か妙なことを始めたのをミリーが興味を惹かれたようで黙って、出来上がるまで待っていたんだよ」

「へ~そうなんだ。あ、それでさドリー。ミモネが皆に話したいことがあるって言うからさ、後でドリーか、俺達の部屋で集まりたいんだけど、いいかな?」

「ワシは構わんが……」

そう言って、ドリーはミリーを一瞥する。

「もしかして、ミリーの世話は寝る時も?」

恒の質問にドリーが黙って頷く。

「そこはなんとか女将さんに言って、今日だけでも預かってもらうことは出来ない?」

「そうだな。確約は出来ないが頼んでみるか」

「うん、お願いね」

「ああ、分かった……」

「どうしたの?」

「いや、ミリーの体を洗わないとダメなんだが、どうしたらいいんだ?」

「ああ、そういうこと。明良! そろそろ、ミリーがのぼせるから、体を洗ってやってよ」

「ん? ああ、そうだな。ミリー上がるぞ」

「うん!」

「ね、これで明良に任せておけば大丈夫でしょ」

「お前、なんて言うか。色々、扱いが上手いんだな」

「そう? 照れるね」

「いや、褒めたつもりはないんだが……」


体も洗い、スッキリとした恒達は喉が渇いたと食堂に向かうと、そこには女将が座っていた。そして、恒達に気付いた女将が振り返る。

「おや? その様子だと風呂はちゃんと出来た様だね。なら、私も入らせてもらおうかな」

「あ、ちょっと待って。女湯の方は内鍵が掛けられているハズだから、由香達が戻るまで待ってよ」

「内鍵……ああ、そうか。まあ、必要だよね。分かった。その辺は明日にでも人を呼んで取り付けてもらうわ。で、ミリーはあんた達と入ったのかい?」

「ああ、心配するなって。ちゃんと隅々まで洗ったからさ」

「ふ~ん、隅々までねぇ~」

「ああ、俺がこの手でな」

そう言って、明良が女将の前に出る。

「ミリー。お父さんを見付けたばかりで、もうお婿さんまで見付けたのかい」

「うん。アキラはすごいんだよ」

「み、ミリー。な、何を言い出すんだ?」

「ほう、面白いね。ミリー、言ってみな! 何がどう凄いんだい?」

「あのね、アキラのね、おまたにはね……」

「うん、おまたには?」

「あのね、こ~んなのがついているんだよ。でね、おとうさんとワタルのとはちがうんだよ」

「へ~そう」

ミリーが自分の手を使って、空中に形を作り、女将はそれを面白そうに見ている。そして女将は明良を一瞥すると面白い物を見付けたって顔になる。

「ミリー。じゃあ、それをお母さんにちゃんと説明してごらん」

「うん、あのね「はい、そこまで!」……あ、おねえちゃん!」

ちょうどミリーが話し始めようとしたところで、お風呂から上がったばかりの由香に遮られる。

「なんだい。面白いところだったのに……まあ、いいや。あんた達が出たってことは、もう風呂には誰もいないんだね。なら、私も入ってこようかな」

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