第46話 地震と、魔力炉

Side:スパロ

 やっと、筋肉痛の地獄から生還した。

 ベルベルには迷惑を掛けてしまったようだ。


 突如、地面が揺れる。

 これは噂に聞く地震という奴か。


 テーブルや棚の物が落ちる。

 大変だ、被害確認しないと。


『ごめん、失敗した』

「ナノがなんで謝るの?」

『さっきの揺れは俺のせい。魔力炉が暴走して爆発した』

「それよりも被害は?」

『建物には被害はないみたいだ。地震に慌てて転がって怪我をした人が数人いるけど、治療済み』

「よかった。地震を起こすって、精霊の力って凄いね」

『ワープ装置を起動させる出力は得たよ』


 分からない事を言うのはいつものナノだ。

 安心した。


 厨房から、ベルベルの悲鳴が上がる。


「どうした?」


 厨房に駆け込む。


「あれよ、あれ」


 ベルベルが割れた瓶を見て途方にくれている。


「何だ、調味料の瓶が割れただけか」

「買うと高いんだから。ナノから買うのもただじゃないし」

「ベルベルが無事で良かったよ。ベルベルに何かあったら生きていけない」

「またぁ、お世辞言っちゃって」

「看病されている時、思ったんだ。こんな人と一緒になりたいって」

「嬉しい♡」


『待たれい。それは女医とか看護婦に惚れるという一時の気の迷い』

「そうなの」

「何がそうなの?」


「ナノが気の迷いだって言うんだ」

「気の迷いでも構わないわ」

『仕方ない。祝福を与えよう。末永くお幸せにな』


 ゴーレムの頭から花が咲いてキラキラと光る物が俺達に降り注いだ。


「綺麗」

「ナノが祝福してくれるって」

「ナノありがとう」

「感謝してるよ」


『おう、それほどでも。ふふふ』


「国からの使者が参りました」


 村人が報せに来た。


「この間のアンデッド討伐の件かな。褒美を貰えるのなら嬉しいな」


 俺は地震で落ちた物を片付け始めた。


Side:ハイチック8000


 ふはは、アンデッドの魔法陣を解析して、魔力を材料としたナノマシンが完成したぞ。

 次なる一手は、魔力炉だな。

 AIが設計してナノマシンが地中深くに建造した。


【成功確率5%です】

【なんでこんなに低い】

【魔力のエネルギー効率が良過ぎて、その出力に炉が耐えられないからです】

【高性能過ぎてぶっ壊れるか。ロマンだな。実験承認。スイッチオン】


【魔力炉爆発しました。爆発規模は反物質爆弾1個に相当。地上近くの施設への被害はありません】


 爆発したか。

 小型化して出力を下げないといけないようだ。


 魔力ナノマシンの力でゴーレムが魔法を使えるようになった。

 魔力ナノマシンの機能としては、今は魔力をエネルギーに変換するだけ。

 魔法陣の解析が進めば、もっと色々と出来るようになるだろう。

 今後に期待だ。

 いや期待しちゃ駄目だ。

 失敗してくれると嬉しい。


 ワープ装置が作れると、銀河連邦に帰還しなきゃならない。

 それは嫌だ。

 でもサボタージュは出来ない。


 スパロの家では結婚待ったなしの展開だな。

 だが、そう上手くいかないのは分かっている。


 諜報ドローンの情報では、スパロが勇者認定されたからだ。

 婚約の相手として王女が上がっているらしい。

 国はスパロにドラゴンを退治させるつもりのようだ。


 どうするかな。

 とりあえずスパロとベルベルちゃんに魔力ナノマシンを振りかけておこう。

 AIが魔法を使って二人を守ってくれるはずだ。


 こうなると、スパロを巡って、ベルベルちゃんと王女の三角関係か。

 どう転ぶかな。

 俺としてはスパロが孤高の道を歩むのが良いんだけど。

 そうなる為のシナリオは、スパロが強くなり過ぎて国が持てあます展開かな。

 婚約する王女は跡取りではないみたいだし。


 スパロの名声が高くなると、王太子が妨害してくる可能性大だ。

 だが、先が読めない。

 出たとこ勝負で構わないか。


 どっちに転んでもそんなに痛くない。


【ゲスですね。ゲス度89です】

【だって楽しみがないんだよ。VRは少し楽しいけど、自分で作った奴は展開が読めて面白くない】


【空気中からの魔力採取許可をスパロに求めて下さい。帰還確率が1%ほど上がります】

【へいへい。分かりましたよ】


 モンスターから採取した魔力は、魔力炉と魔力ナノマシンに全て使ってしまった。

 空気中から採取出来るのは知っているけど、採取には現地政府の許可がいる。

 空気からの採取は、支配階級の賛成が、5割以上要るのだ。

 スパロに許可をとりつけさせるのは大変だな。

 勇者認定を上手く使うとするか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る