第31話 遊園地と、スタッフ

Side:スパロ

 ナノが精霊の国に遊園地が出来たというので遊びに行く。

 畑に横たわると、色とりどりのアーチの前に立っていた。


 一緒に来た孤児たちが走り出す。

 もこもこしたぬいぐるみ型の精霊が迎えてくれた。

 孤児達は大胆だな。

 精霊に抱きついている。


「楽しそうですね」


 聖女様がそう言って辺りを見回した。


「わたしも精霊に抱きつこうかな」


 ベルベルが孤児を羨ましそうに見て言った。


「いいんじゃないの。人間じゃないから、はしたないとは言わせないさ」

「行って来る」


 ベルベルが精霊に抱きついて感触を楽しんでいる。

 変な物を配っている精霊がいる。


 色々な色をした宙に浮かぶ大きいボールだ。

 糸が付けてあって飛ばないようにしてある。


 差し出してきたので、3つ貰った。

 聖女様とベルベルに渡す。


 この玩具はなんか楽しいな。

 童心に帰るような気がする。


「こうして遊ぶことが出来るなんて幸せです」


 聖女様は微笑んでいた。

 こうしてみると可愛い女の子だ。


 色々な機械がある。

 鉄骨を組んだムカデみたいな物に目を奪われた。


 物凄い勢いで鉄骨の上を乗りものが走る。

 飛び出したり落ちないのが不思議だ。

 乗っている孤児たちは嬉しそうに声をあげていた。


「ベルベル、あれに乗ろう」

「なんか怖そうだけど」

「大丈夫さ。この世界では死なないから」

「怖い。手を握っててくれる」

「ああ、お安い御用だよ」


 ジョットコースターと書かれた乗り物に乗る。

 しばらくして、ガクンと音がして動き始めた。


「ひうっ」

「大丈夫だ。隣にいるから」


 ガシャガシャとうるさい。

 上の方にゆっくりと上がっていって、それから急降下。

 鳥になった気分で、爽快だ。

 錐揉み、回転、本当に飛んでいる気分だ。


 ベルベルは悲鳴を上げっぱなし。

 後ろの席の聖女様からは悲鳴は聞こえない。


 短い時間だったが、楽しかった。

 乗り物が停まったので降りる。

 ベルベルが降りてこない。


「どこか怪我でもした?」

「腰が抜けたの。立てない」

「つかまれよ」


 俺は抱き上げるようにして、ベルベルを降ろしてやった。

 ベルベルの様子がおかしい。

 キョロキョロと視線が泳ぐ。

 そして、出口まで歩いて、指をさした。


 箱が置いてある。

 ベルベルは駆け寄るとスリットにカードを差し込んだ。

 そして、普通に戻った。


 箱に近づいてみると、下着販売機とある。

 ああ。

 聖女様もそれを買った。

 着替えが一瞬で済んで良かったね。

 ここにはまた来よう。


Side:ハイチック8000


 VRに遊園地を作った。

 ジェットコースター、お化け屋敷、コーヒーカップに観覧車、絶叫マシンなどオーソドックスな物を揃えた。


 俺はスタッフの一人に偽装した。

 ぐぶふ、合法的に抱きつける。


 孤児達が駆け寄ってきて俺に体当たりする。

 ぐっ、息がつまる。

 おい、蹴りを入れるな。


 ベルベルちゃん、イユンティちゃん、村娘ちゃんが来る。

 俺に思う存分抱きつけ。


 ありゃ、俺の所には来ないのね。

 殺気みたいなエロ気が漏れたかな。

 糞ガキは相変わらず来る。

 お前ら邪魔なんだよ。


 行ってしまった。

 くそっ、スパロとベルベルが手を繋いでジェットコースターに乗っている。

 羨ましい。


 そして、パンツを買った。

 俺はパンツになりたい。


 今度、お化け屋敷に誘ってみようかな。

 ベルベルはスパロに譲る。

 俺はイユンティちゃんと手を繋いでお化け屋敷を回るんだ。

 提案してみよう。


 今回は漏らして、恥ずかしがったベルベルちゃんとイユンティちゃんを見れただけで満足。

 こら、蹴りを入れるな。

 そこはらめぇ。


 糞ガキめ、もう許さん。

 俺は糞ガキを捕まえて髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。


「きゃっきゃっ」


 喜んでるんじゃねえぞ。

 くすぐってやる。


「ぐはははっ。お母さん」


 俺はお前のお母さんじゃない。

 ああ、娘さん達が帰って行く。

 糞ガキ達は何時までも帰らない。


 強制ログアウトしてやった。

 管理者権限を舐めるなよ。

 ここは俺の世界だ。

 俺が王様だ。

 エロい事はできないけどね。


 そうだ、プールも作ろう。

 水着姿でもいくぶん癒されるに違いない。

 泳ぐ習慣はあるのかな。

 ないと思った方が良い。

 溺れない為の訓練だと言ってやらせてみようかな。

 夢が広がるな。

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