飢餓の村に永久追放された俺は、精霊の畑でざまぁする~村は一年で大都市に。爵位を譲れと言っても、もう遅い。俺はここに骨をうずめるのだ~
喰寝丸太
第1話 落ちて来た星
Side:スパロ
「スパロ、お前も今日で15歳の成人だ。兄を補佐する為に試練を与えよう。ティトマウス村を王都並みに発展させるのだ。そこの領主にしてやる。嬉しかろう」
父上にそう言われた。
俺は騎士爵を継ぐらしい。
くそう、厄介払いされた。
俺はてっきり兄の補佐をする為に文官になるものとばかり思ってた。
でも、自慢じゃないが、武術、勉強、魔法、芸術と貴族に必要な事は何も出来ない。
優しいので領民に人気があるだけだ。
だから、大部分の親戚に、跡取りとして、俺を推す声がある。
操縦し易いと思われているのだと思う。
ティトマウス村っていったら、廃村にするか議題に上がっている所じゃないか。
土地が痩せていて、水源も十分ではない。
いくら俺が庶子だからと言って、これはあんまりだ。
だが、逆らって何になる。
自由民の行き着く先など決まっている。
スラムに行って犯罪者に落ちぶれて、処刑されるのがいい所だ。
あーあ、腕っぷしに自信があれば、冒険者になれるのに。
出来ない事を言っても仕方ない。
「分かりました。3日後に出立します」
俺は別れを告げる為に、幼馴染のベルベルの所に行った。
ベルベルは俺の住んでいる屋敷でメイド見習いをしている。
「ティトマウス村の領主をする事になった」
「何時まで?」
「分からない。もしかしたら一生かも」
「おー、スパロじゃないか」
声を掛けてきたのは、弟のフィンチイ。
こいつは本妻の子で俺とは身分が違う。
本来は同じ息子だが、母親の身分が違うとどうしようもない。
俺は6人兄弟妹の次男で、兄と弟が2人と妹が2人。
いずれも腹違いだ。
「俺達は忙しい」
「つれないな。そうだベルベルは俺の妾にしよう。飽きたら奴隷にして売っ払ってもいいな」
「お断りします」
ベルベルはきつい目つきでフィンチイを睨んだ。
「ほう、平民の分際で断るのか」
「ベルベルは俺の侍女として連れて行く」
「はははっ、良いだろう。ティトマウス村で一緒に野垂れ死ぬといいさ」
俺はさっそく準備に取り掛かった。
「素人にも扱える剣がすぐほしい」
俺は武器屋でそう言った。
「ふむ、初心者用の剣な。それだと金貨3枚ってとこだな」
「買う。売ってくれ」
「防具はどうする? 鎧は調整に時間が掛かる」
「防具は要らないな。飢餓との戦いだ。村人が襲って来るかも知れないが、たぶんその時は死ぬだろう。人数差はどうにもならない」
「剣は威嚇用にって事だな」
「そうだ」
「じゃあ強そうに見える剣にしよう」
剣を手に入れたが、少しも強くなった気がしない。
食料店を回る。
小麦粉、干し肉、塩、果物を手に入れた。
馬の飼料も買った。
こうして、俺達は旅立った。
「ごめん。巻き込んでしまって」
馬車の御者台の上で、俺とベルベルは会話している。
「ううん良いの。あのままだと何をされていたか」
「ティトマウス村は酷い所だ。飢えないように、余分な金は全て食料に換えて、積んできた。何時まで持つやら」
「二人ならなんとかなるわよ。一人で食えなくても、二人なら食えるって言うじゃない」
それは独身で自炊もままならない奴が、結婚して二人でご飯を作って食べて、同じ金でなんとかなるって事だろ。
俺達には当てはまらない。
ベルベルは明るく振る舞っている。
否定しても仕方ない。
「そうだね。一人より二人だね」
6日ほど旅をして、ティトマウス村に着いた。
村の現状は酷かった。
やせこけた村人。
枯れた作物。
村人は動く気力もなくて、うずくまるしか出来ないでいる。
土を食っている奴さえいる。
こんなに酷いとは予想以上だ。
廃村とかそんな段階じゃない。
もう既に廃村状態だ。
「食料を分けてあげましょうよ」
ベルベルがそういう。
「そんな事をしたら俺達が暮らしていけない」
「彼らを見捨てるの?」
俺は決断を迫られた。
どうする。
彼らを見捨てて俺達だけで生き延びる?
そんな事をしたら、嫌な貴族になってしまいそうだ。
神様、いるなら俺を助けて下さい。
俺がやるしかないんだよな。
飢餓の本は読んだ事がある。
いきなり栄養がある物を食わせると体が驚いてしまう。
干し肉の煮汁と小麦粉をお湯で溶いた物を混ぜて、塩と果物の汁で味付けしよう。
これなら、村人全員に行き渡る。
俺とベルベルは麦の重湯もどきを作って振る舞った。
村人には感謝されたが、明日からどうしよう。
俺が猟に出るしかないのか。
とりあえず、今日は寝よう。
「ねぇ、起きて」
俺は夜中、ベルベルに起こされた。
「何だ。モンスターでも攻めてきたか」
「外を見て。夜なのに空が明るいわ」
俺は窓の木戸を開けて、外を見た。
本当だ、明るい。
星が落ちてきたのか。
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