無自覚な聖女、マリーの奮闘。え?私が世界を救うって本当ですか?!(ヒロインが自分が聖女だと気づいてくれません!)

花和

プロローグ

フランネル王国王都にあるルナリア教の中央教会。

祈りの間にある祭壇には、人の背の高さほどもある巨大な球体の「聖石」が浮いていた。


「聖石」の謂れは今から1300年前の建国神話に遡る。


それは突然のことだったそうだ。

あるとき、天から一筋の光が差したかと思うと辺り一帯が明るく光り、それは目を開けていられないほどだったという。

すると、まるで古い絵画から抜け出た天使のような羽のある人々が雲間から現れ、空から地上へ舞降りた。

そして、大人の背丈ほどもある白く輝く球体のものを置いていったのだ。

そのとき、天から美しい声が響き渡った。


は地を生きるものらに与えるもの 正しき祈りは美しき 正しき祈りは癒し は白き は曇りしとき地は無となりー


男性のようにも女性のようにも聞こえるその声がそう告げ終わると、光は消えたのだという。

人々はこれこそ神の御業だと畏れ、その場にひれ伏して祈ったという。


しばらくは「神を見た」「光の中に美しい女神を見た」という者も多く大変な騒ぎとなり、学者や研究者などの知識人の議論が続く。

そして、「この球体は女神がこの世界に生きる人々に与えられた聖なる石“聖石”で、神はこの聖石に祈りを捧げよと言われた。祈ることが国を癒し、正しい道に導いてくれるものだ。この聖石を曇らせてはならない」との見解を発表したのだった。


国王はこの聖石を保護するために教会を建てた。

すると聖石は自ら浮かび上がり、教会の祭壇に収まった。以来聖石は今日まで祭壇に浮かんで、そこにある。


この出来事により、この国に信仰が生まれ、人々は祈りを捧げ、程なくして不思議な力を持つ女性たちが誕生する。

彼女らは、祈りを通してあらゆるものを浄化し癒すことができる。

それはまるで神々の御業のようだと、人々は彼女たちを聖なる力を持つ女性「聖女」と呼び、崇めるようになる。


この神話や聖女の存在により「神の寵愛を受ける国」と呼ばれはじめるフランネル王国は、四季のある気候は安定し冬も比較的温暖で、豊富な水にも恵まれ、一年中美しく花が咲き、農作物の実りにも恵まれる豊かな国として栄えたのだった。

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