第七話

 「ここに何で来たか分かるな!?」


 みんな下をうつむいてる。


 「私は今日から補習授業担当のサイアス。魔導担当だ。分かってるな!」


 そして補習授業となる場は教室じゃない。ここは魔法鍛錬場である。


 「ここでみっちり上級魔法を身に着けてもらう」


 「アネット!」


 「はい」


 「クライス!」


 「はい」


 (ふーん。眼鏡っ子ね。いかにもちょっと変わってそう。人の事は言えないか。いわゆる真面目系クズかな。ちょっと精神も病んでそう)


 「マーテル!」


 「……はい」


 (うーん、一見なんてことない普通の子に見えるけどなあ)


 「シロウ!」


 「やれやれ」


 「なんだと? ちゃんと返事しろ!」


 「はいはい」


 (うわっ、出た!! ナンパ貴族!!)


 「お前たちは本来中等教育期間中にマスターすべき上級魔法すら全く習得できてない。このままだと留年だぞ?」


 掌に焔が生まれる。


 「よく見て見ろ!」


 それは業火の術だった。


 「これが上級魔法の基本だ!」


 この時「さーち君」・「れっく君」はばっちり録画・録音した。


 授業が終わるとアネットは水晶玉で録画した先生の術を何度も見た。そして何度も聞いた。


 水晶玉は途中ストップも出来るのでどんな格好なのか。魔法の術やイントネーションなどがよくわかった。ここでマネできれば万事解決だが問題は魔力だった。


「はー、どうすれば」


◆◇◆◇


 ――翌日


 「簡単だ」


 「本当? フェルナンデス?」


 「一つ目は君の両親がやったように人の肉を食うこと」


 「それはダメな奴でしょ」


 「もう一つは幼少期から徹底的に魔術の勉強をし魔法を発動させること」


 「だから私、生まれつき血の中にある魔素が少ないんだって」


 「最後は補助魔法の指輪をはめる」


 「それは特殊な魔法石が必要でしょ? あったら内部進学できるよ」


 「僕は様々な石をブレンドするることに成功した人間だよ? ほら」


 「何よこれ……」


 見たこともない色だった。


 「動物の血を使ったものだ。安心してくれ」


 付いて行ったのは魔法鍛錬場。


 「さあ、指輪をはめて業火の術を出してごらん?」


 すると……。


 アネットが出せた。高等魔術である業火の術を!


 「どういうこと、私、私……私っ!!」


 「落ち着け!!」


 「出来たよ~!」


 アネットは大泣きした。


 「今から説明する。貴重な猿の血を使った。めったにこの魔導石は作れるものじゃない。心配するなよ? 猿は殺してない。猿の血を少し抜き取っただけだ」


 「え?」


 「人間に近い存在の血なら可能かもしれないと思ってな。そこらの猿じゃねえぞ」


 人形姫アネットの逆襲……婚約破棄・追放からの逆転人生の答えは魔導石にあった。


 貴重な猿……南洋猿という種を狩るクエストを学生ギルドに出したことはフェルナンデスの秘密である。


第二章 終

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