第六話

 ところで、そもそも何で育ての両親はこんなあばら家を持っていたのか。


 そして、この地下室はいったい何なのか。

 ずっと気になっていた。

 いままで生きるのに精いっぱいだから地下室のことは後回しだったけど。


 そして、なぜこのあばら家を私に譲渡したのか。


 地下室の前は石の扉があった。壁も含めて階段付近から明らかにここだけ材質が違う。


 押しても……開かない!!


 (ん、くぼみ!?)


 このくぼみはなんだろう?


 うーん、こんどフェルナンデスが来たときに聴いてみるか。


◆◇◆◇


 農業関係の人形も林業関係の人形も次々増やしていった。


 それにしても人形を増やしすぎる事も問題でエネルギーチャージで消耗することがわかった。


 なんとせいぜい十人までがやっとということがわかった。三十人なんて無理なのだ。


 七人目はグリーンちゃん、八人目はランドちゃん、九人目はファームちゃん。十人目はフィールドちゃんと名付けた。


 そのうえでベータ版人形として「サーチ君」の試作にとりかかった。

 眼の部分に水晶をつけて呪文を唱える。人形操術によって動く人形って本当は全身で感覚や音・光を感じ取っているのだが映像を他の場所に飛ばすということまでは考えていなかったからである。よって今までの人形の眼は単なる装飾品なのだがサーチ型人形は文字通り「眼」になる。


 そしてフェルナンデスの言うとおりに紫の魔導石と蒼の魔導石と黄色の魔導石をブレンドした魔導石を混ぜたものを眼にはめ込む。魔導石を溶かす技術自体が高度な上非常に高価な魔導石を埋め込むのだ。よくそんなことを思いついたものだ。混合比率は「極秘」だそうだ。


◆◇◆◇


 「映像映ってる? 水晶玉に?」


 「おお、アネット。映ってるぞ。とっても遠くからでも映る」


 フェルナンデスは満足そうだ。


 「じゃあ、これをあと三体作ればいいのね」


 「そうだな」


 「それと別件があるんだけど」


 「別件?」


 「実は地下室らしきものがあって……」


 「ほお?」


 フェルナンデスにも来てもらうと顔をしかめた。


 「これは……黒魔術のたぐいだ」


 「え?」


 「君はこの扉を開けるなとか言われてないか?」


 「ないよ」


 「ちょうどいい、この水晶を使うぞ」


 くぼみに水晶玉を置いた。

 何やらフェルナンデスは呪文を唱えた。すると指からなにらや文字が飛んできた。


 ――ゴゴゴゴゴゴ ガタン!


 重い音と共に扉が開いた。


 「アネット、覚悟はいいな? ここを見せるぞ」


 「なに、ここ!?」


 魔法陣に数々の骸骨。金や銀で出来た儀礼用の杯。何か人を寝かせるための石造りの台に手枷・足枷。なんだ、ここは!? 魔法陣の大きさは子供用のサイズだった。骸骨は棚に無造作に置かれていた。排水溝がやけに大きい。排水溝の中にも骨が落ちていた……。巨大なのこぎりやなたやはさみも壁に掛けてあった。


 「やはり……」


 フェルナンデスはうなずく。


 「ギルバートが何で婚約破棄したのか。君が人形遊びばかりして幼稚だからというのは理由の半分にすぎん。しかし噂が本当だったとは」


 (どういうこと!? 噂って何!?)


 「クロエ家は、新生児や貧困な幼児を引き取っては悪魔に生贄をささげ、その代償として上級魔法を授かっている」


 (うそよ……)


 「ささげた新生児、幼児、少年や少女の残りを悪魔から慈悲で受け取り、自分も魔力増強のために人の肉を食う」


 「うそよ!!」


 「君の生みの親は反対していたという。おそらくそれで君の両親は……」


 「うそよ!!」


 アネットは耳をふさいでいる。


 「だめだ、現実を見るんだ!」


 アネットはふりかぶっている。


 「おそらく君は劣等生として利用価値が無いから魔導学院に入れたのだろう。利用価値があれば……」


 「やめて!!」


 「この事実を知ったら君も無事じゃ済まないんだぞ!?」


第一章 終

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