第17話

 ヤヤ子side



 授業中も頭を悩ませる。


 朝も朝から落とすための作戦は考えてきたけど……。


 勝てねえええ……。


 朝の涼葉と千尋のやりとり。あの綺麗すぎる顔から繰り出される小悪魔的なやりとり。女の私でさえ、ドキドキするやりとり。


 一体誰が涼葉に勝てると言うのか。


 はあああああ……。


 大きすぎるため息を内心で吐く。


 でも、勝たねば、千尋と一緒にいられない。


 いやあああ! 絶対いやあああ!


 正攻法は無理ならば、外道な方法をとるしかないか?


 まず、うまく誘い込んで、3メートルの深さの落とし穴に嵌める。脚立を持ってダンスしながら上から脅迫すればいけるか? 無理でも千尋がお腹が空くタイミングに合わせて、キャビアとフォアグラのトリュフステーキを直食いして食事で釣ればいけるか? むしろ、コンクリ流し込んだらすぐじゃないか? というかそこまでしないと、無理な時点で無理なのでは?


 ダメだ。外道な方法では、一時限りで、ずっと一緒にはいられない。


 やっぱ正攻法? 涼葉ができないよう、色仕掛け……はこれ以上できないし、涼葉もできるかも……ごく。今度、千尋の部屋に監視カメラ置いておこう。


 なんて冗談を考えている暇があれば、もっと作戦に頭を回せ。


 とは言っても、これだけ考えたのだから涼葉に勝てる案はないだろう。


 いや、涼葉に勝てる? そうか、何も千尋を落とす必要はない、涼葉に勝てばいいのだ。


 涼葉に千尋とは彼氏彼女仲だと思わせ、身を引かせればいい。色々と良心が咎めるが、もはやこれしかない。


 いける。もともと、私と千尋は彼氏彼女の仲だと、周囲からは見られているのだ。いつものように振る舞うだけ、いやそれよりは親しい感じで振る舞えば、涼葉に勝てる。


「おーい、ヤヤ子?」


 目の前で手を振ってきた千尋。時計を見ると、とうに昼休みに入っていた。


「どうする? 今日の飯?」

「お弁当あるから、友達と食べる」

「そか、了解。あとさ、放課後、涼葉と遊ぶんだけど、ヤヤ子もくる?」


 ビッグチャンス到来。これで涼葉に身を引かせることができる。


 私は食い気味に行くと答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る