枕友達と言うには熱すぎて、親友と言うには甘すぎて、恋人と言うには軽すぎる関係の女の子。俺のことを好きなクール系美少女が現れてから、その子の様子がおかしいんだけど。

ひつじ

プロローグ的なもの


 なくてはならないものがある。


 それは水だったり、食べ物だったり、衣服であったり、それらを買うお金であったりだ。


 逆になくてもいいものもある。


 お菓子であったり、ゲームであったり、友達であったり、嗜好品の類のものだ。


 私にとって橋下千尋という男は、後者に分類される。


 友達のように気兼ねなく笑い合える。

 恋人のように甘い空気に胸を焦がされる。

 セフレのように快感を求め合うがままに体を重ねられる。


 そんな関係の彼は最高の嗜好品で、手放すことは出来そうにない。


 だけど、分類上、なくてもいいものにあたる。


 その上、私たちの関係には名がない。


 友達であれば、千尋を好きな人がいようが、側にいることが許されるだろう。

 恋人であれば、千尋を好きな人がいようが、堂々と彼女として側にいれるだろう。

 セフレであれば、千尋を好きな人がいようが、隠れて側にいれるだろう。


 しかし。


 友達でなければ、親しい女が近くにいることは許されない。

 恋人でなければ、身を引かざるを得ない。

 セフレでなければ、隠してまで近くにおいてはもらえない。


 だから私は、


『矢野と橋下ってどういう関係?』


 恋する乙女の顔をした涼葉の問いに、答えることができなかった。


 ベッドの上を転がって足をバタバタさせる。


「いやだぁ〜〜〜〜〜!! 友達みたいにまだまだ遊びたい! 恋人みたいにまだまだ甘くなりたい! まだまだセックスしたーい!! 千尋と一緒にいたーい! あ、痛ぁ!?」


 ———とベッドから転げ落ちる女の子と、主人公の千尋の関係が変わるかどうかの物語。あるいは、クール系美少女涼葉を交えた三角形ラブコメディである。


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