第20話 父。殺人未遂を侵す

桶星さん

若い頃(10代)

けっこうヤンチャでした・・・。


なんたって

一人で夜の歌舞伎町へ

遊びに行くんですから

(子供の頃から群れるの嫌い!

悪い事を群れですると足がつく

一人だと逃げ切れる)


その夜も終電で帰宅

午前1時過ぎ(笑)


そ~っと玄関を開けると

家の中は静かだ

「皆、寝ているな」

(わざと家族が寝静まってから

帰宅していた、悪い奴)

でも・・・。

なぜか今夜は玄関の灯りが付いている

廊下の灯りまで付いている

そして・・・。


玄関の上りかまちには

仁王立ちの父

そして・・・。

その手には木刀

(この木刀は修学旅行生が

土産に買うような

ちゃっちい代物では無い

剣術稽古に使う

丈夫で重くて、

充分に殺傷力有りの木刀)


父の眼は

しょっちゅう午前様の

阿婆擦れ娘(私)の行動に対し

怒りに燃えていた


無言で木刀を振り上げる父

(上段の構え

頭を直撃したらマジ死にます)

明らかな殺意を感じた


桶星は死ぬことは別段怖く無かった

(酔っていたからか?)


それよりも

『こんな事で父を殺人犯にはできない!』

と強く思い焦った。


父は、そのまま木刀を振り落とした

のだが・・・。

あちら様も、随分と酔っているらしく

木刀は桶星の頭を逸れ

左肩に・・・。


桶星の

『私の為に、父を人殺しにできない!』

の想いは強く

左肩に振り落とされた木刀を

打たれる直前に右手で止め

弱々しく

「危ないよ、お父さん」

と言いながら

木刀を力一杯引っ張った


そしたら・・・。

父はバランス崩し

玄関の上り框から

見事に転げ落ちてしまった


弱々しく

「お父さん大丈夫?」

と声を掛けると

父は無言で自分の部屋へ戻って行った。


桶星、殺されずに済んだ

父、殺さずに済んだ。


翌朝

思いの外、父の転倒傷は深手で

それを見た母ナホコさん

「だから止めなさいと言ったでしょ」

と父を𠮟っているんですけど・・・。

知ってたの?


「どうせ、ろくな事にならないからって

止めたのに、木刀を持ち出してねぇ~。

付合いきれないから先に寝たわよ」


いやいやいや

止めようよ

そこは力の限り止めてよ!

夫が娘を殺そうとしてんだから

止めましょうよ!


まさに・・・この母、恐るべし!

向かうところ敵なしの強者

ナホコさん、である。




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