第7話 婚約披露パーティー ※フェリクス視点

 父上を説得して、なんとかお金を出してもらえることになった。


 かなり渋っていたので交渉するのに苦労したけれど、最終的には許可してくれた。パーティーを成功させるように念押しされたが、ペトラなら問題ないだろう。


 資金については解決した。後はペトラに任せたので、当日になるのを待つだけだ。そして、いよいよパーティーの日がやってきた。


 ペトラは、とても派手なドレスで着飾っている。可愛らしくて美しい姿に見惚れてしまう。


「どうかしら、フェリクス様?」

「綺麗だよ、ペトラ」

「嬉しいわ!」


 彼女は、俺の感想を聞いて喜んでいた。満面の笑みを浮かべて、幸せそうにしている。その姿を見れて、本当に良かった。だが、少し問題がある。


「君のドレスと比べて、俺の服は少し地味だな」

「そんなことはありませんよ。とても似合っています」

「本当か?」

「はい、もちろんです」

「それなら良いんだけどな……」


 ペトラのドレスは派手で豪華なので、俺の服装と比べると見劣りしてしまう。


 せっかくの婚約披露パーティーなのに、この格好では駄目だろう。ちゃんと事前に聞いて、今日のために用意しておくべきだった。


 いつもは事前に服装も用意してくれいてたが、今回は違う。ペトラは、色々と初めてだろうから仕方ないと思う。事前に確認しなかったのは、俺のミスだった。これは失敗したな……。


「あ、フェリクス様! お客様が、いらっしゃいました」

「分かった。一緒に出迎えよう」


 ペトラが指さした方向を見ると、会場に客が入ってくるところが見える。招待状を送っておいたので、その人達が来たようだ。それから次々と到着したので出迎えると、最終的に20人ぐらいが集まった。いつもと比べて、人が少ない。


「今日は、到着が遅れている人が多いみたいだな」

「そうですわね」

「あと何人ほど来る予定なんだ?」

「うーん。もっと来てくれると思いますが。招待状は数百人に送ってあるので」

「そんなに送ったのか?」

「はい! お友達にも声をかけたのですが、まだ返事が返ってきてなくて……」

「……なるほど」


 どうやら、友人も呼ぶらしい。俺の知らない人が沢山来るのかな? まぁ、ペトラの知り合いなら大丈夫だと思うけど。

 

 しかし、しばらく待ったが誰も来ない。人は増えそうになかった。


 これ以上は待てないので、開始することにした。まず最初に、主催者として挨拶を行う。


「ペトラ、スピーチの原稿は?」

「……スピーチ? 原稿?」

「え?」


 ペトラが不思議そうな顔で、首を傾げていた。もしかして、それも用意していないのか。困ったな。とりあえず、過去に話した内容を思い出して話すことにしよう。


「皆様! 本日は、ようこそおいでくださいました」


 参加者達の注目が集まる。俺は、いつもより緊張しながら口を開いた。


「私は、ハルトマイヤー公爵家の次期当主、フェリクス・ハルトマイヤーと申します。そして、彼女はペトラ。スターム侯爵家の令嬢で、私の婚約者となった女性です」

「よろしくお願いします!」


 ペトラが元気よく挨拶をして、頭を下げる。


「本日は、私達の婚約披露パーティーにご参加いただき、誠にありがとうございます。ぜひ最後まで楽しんでいってください」


 なんとか最後まで噛まずに言えた。ペトラのことも、ちゃんと紹介できた。これで大丈夫だろうか。少し不安になったが、参加者達の反応を見る限り、大丈夫そうだ。


 そして、予定通りパーティーが始まった。


 ペトラが積極的に参加者達と話したり、料理を食べさせたりしている。しっかりと役割を果たす姿を見ているだけで嬉しかった。そして俺も一緒に、参加者達と親交を深めていく。


 だけど、時間が経つにつれて問題が浮上してきた。なぜか参加者達がパーティーの途中で帰ってしまった。


 最初は20人以上居たはずなのに、今は10人程度しか残っていない。


 これ以上帰ってしまっと、人が居なくなってパーティーを終わらせるしかなくなるだろう。まだ、時間はたっぷりある。どうにかしないと。俺は周りに聞こえないよう小声でペトラに話しかける。すると彼女は、笑顔で振り返った。


「ペトラ、ちょっといいか」

「どうしました?」

「参加者達が次々と帰っているようだが、大丈夫なのか?」

「あら?」


 ペトラは、不思議そうに周囲を見回した。人が少なくなっているのが、見てすぐに分かるはずだ。だけど、なぜ帰るのか理解できていない様子だった。これは、彼女のプラン通りじゃないのか。


「皆さん、帰ってしまったのね」


 ペトラは悲しそうな顔をして、寂しそうな声で呟く。その姿を見た俺は、なんとかしないといけないと思った。だが、何をすればいいか分からない。


「でも今は、会場に残っている方々と楽しみましょう!」


 彼女は、気を取り直して明るく振る舞っていた。そんなペトラを見て思う。きっとこれが彼女のやり方なんだろう。俺は彼女に任せたのだから、最後まで信じて任せることにした。


「なるほど、そうだな。彼らを楽しまないと」


 俺も会場に残った人達と一緒になって、最後までパーティーを楽しむことにした。食事やダンスを順番に行いながら、親睦を深めていく。


 パーティーが無事に終わり、ペトラは満足そうに笑っている。俺も安心していた。いつも以上に疲れたけれど、なんとか上手くいったようだ。

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