巨人女戦士の骨格を利用して造られた超巨大宇宙船の巨人女戦士の残留思念がやたらと反抗的で……船内に収容されているロボットチームの連中も個性的過ぎて元宇宙海賊のオレでも手に負えないのだが

楠本恵士

第一章・超々々巨大宇宙船【マクロ・クィーン】の前面にゃ女のドクロが付いている

第1話・超々々巨大宇宙船【マクロ・クィーン】発進

 漆黒の宇宙を進む、前面に超々々巨大な女のドクロが付いた、宇宙船【マクロ・クィーン】


 額を防御する逆三角形型の金属板を付けた、巨人女性戦士の頭蓋骨と手足の骨格を除いた、胴体の骨格を利用して造られた宇宙の内部で、男と女の言い争う声が響いていた。


「ふざけるな! 墓から勝手に掘り出した。あたしの骨体を、こんな宇宙船に造り替えやがって!」

 円筒の空間──全長三十メートルほどの三次元立体映像の、女性戦士の額には、宇宙船の前面ドクロと同じ形の防具が、装着されている。

 女性戦士の前方には、元宇宙海賊〔男性〕のキャプテン【ダン・凱王がいおう】が、マントを送風でなびかせ、腕組みをして立っていた。

「なんとか言ったらどうだ! へタレ海賊! こんなミニサイズの三次元立体映像にしやがって」

「我々、ヒューマン種族から見れば、その姿でも十分な巨人だがな」

「ふざけるな!」

 巨人の女性戦士──【ガイ・クィーン】は引き抜いた剣をキャプテン凱王に向かって、振り下ろす。

 剣は凱王の体を素通りする。

「残念でしたぁ、立体映像なので痛くも痒くもありましぇ~ん」

「なんかムカつく! だいたい、なんであたしの骨を掘り起こし宇宙船に変えたのよ」

「前に話したが覚えていないか……巨人戦士の頭蓋骨の裏側にこびりついて、残っていた脳ミソが重要なんだよ……代々、蓄積された戦闘経験と巨人の直感力で、出撃する《マシン・ファイター》を選んでもらおうと思ってな」


 キャプテン凱王は、ロボットという呼び方よりも『マシン・ファイター』という呼び方を、商品登録して宇宙に広めようと考えている。


「頭蓋骨の裏側にこびりついていた、脳ミソとか言うな! あたしの存在価値はそこか!」

 胡座あぐらをかいたガイ・クィーンは、 不機嫌そうな表情で立体映像の胸や下腹部を撫で回した。

「宇宙船のあたしの、お腹の中にロボットチームの連中が収容されていると思うと、寄生虫がいるみたいで気持ち悪い」

「そう言うな……おまえは、アウトレットで特価販売されていた宇宙船なんだから……お買い得だったんだよ」

「あたし、アウトレット宇宙船だったの!?」


 キャプテン凱王とガイ・クィーンが、そんなやり取りをしていると。

 水色でミニスカートの看護士服を着た。看護士【フォン・ラーゼ】〔女性〕が、立てつけが悪い横扉を開けて部屋に入ってきた。

「なに、この扉……どっか錆びているんじゃないの……さすが、特価の安物宇宙船ね」

 ラーゼは、不機嫌そうな表情で呟きながら、キャプテン凱王に言った。

「まったく、なんで一部の部屋には船内通話システムが起動していないのかしら、おかげで看護士のあたしが今回は、伝言伝えに行かないといけないし……ブツブツ、キャプテン……惑星Zー1から、ロボットじゃなかった。マシン・ファイター派遣の依頼です」


「依頼きたか……跳躍航行開始」

「ワープですね」

「違う、跳躍航行だ」

 キャプテン凱王は、ワープという言葉よりも跳躍航行という言葉を、銀河系に拡散しようとしていた。


 跳躍航行で、惑星Z―1の領界空間に出た途端、惑星から侵入者扱いされた宇宙船マクロ・クィーンは、惑星から防衛砲撃でロケット攻撃された。

 瞬時に、自動迎撃システムが作動して、攻撃ロケットを全弾撃墜した。


 船橋のキャプテン席で、惑星に向かって怒鳴るキャプテン・凱王。

「それが、助けに来てやった者に対する態度か! 今撃ってきた奴らが敵か? 敵なんだな、そういうコトにしておこう」

 キャプテン・凱王は、普段は節電で切ってある、ガイ・クィーン部屋への回線を開く。


「ガイ・クィーン! 一番、最適のマシン・ファイターを選び出せ!」 

 立体映像の耳の穴を小指でほじくりながら、ガイ・クィーンが面倒くさそうに返答する。


「そうねぇ、データだと巨人種族が敵みたいだから『宇宙そら姫ユニット次元激唱【アプサラス】』がいいんじゃない」

「よーし、最終合体ファイナルフュージョン承認! 宇宙そら姫ユニット出撃!」

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