ゾーンウィッチエイド
かいちょう
action.0 プロローグ
国道の歩道を、ひとりの少女が車よりも速いスピードで走る。
とても人間では出来ないような離れ業をやる彼女、おそらく魔法少女だ。
その彼女が交差点に差し掛かった。そこには道路を横断する老婆がいた。足取りもおぼつかない痩せた老婆は、ゆっくりしたペースで横断歩道を渡っている。
魔法少女は老婆の横を過ぎたと思ったら、急停車すると少し戻り、その老婆を抱きしめたのだった。
その瞬間、道路の横から猛スピードで走ってきた車が魔法少女に激突した。
大音響とともに、車は弾き飛ばされ、道路反対側のガードレールに激突。またもや大きな音と共に車は止まった。
交差点に差し掛かっていた車や通行人、そして付近の住民は、大きな音で事故が起こったことを知る。
そこで見たものは、前が大破した車ではなく、横断歩道で赤い妖気を出して佇んでいた魔法少女だった。
全身赤ずくめの衣装を纏う彼女は、凜々しく精悍な顔つきをしていた。この出で立ちは、まさに魔法少女そのものだ。
そしてただならぬ妖気。
普通の人間には見えないと言われている妖気は、魔法の力が強いことを示している。
相当優秀な魔法少女なのだろう。
……しかし、あれ? この地域に赤い魔法少女なんていたっけ?
魔法少女は老婆を抱きかかえながら周囲を見わたした。抱えられていた老婆は冷静にたずねた。
「いや、びっくりしたねー。お嬢さん大丈夫?」
「え、あ、はい。」
「それにしてもここら辺で見ない魔法少女さんだねえ。外人さんかい?」
見ると、彼女は栗毛で青い瞳の少女だった。
そんな言葉のやりとりをしているうちに、赤い妖気は消え、魔法少女の動きがぎこちなくなってきた。
「ええぇぇぇぇ~~~!!!」
大声を上げたかと思うと、周りを見ながらそわそわしている。自分の姿を見て、気持ちが落ち着かないような仕草も時折見える。
通行人や車を降りてきた人たちが、スマホを取り出し写真を撮ろうとしているが、魔法少女は顔を隠して拒否している。先ほどの精かんな顔つきとはまるで別人のようだ。
周りの人が集まりだしで人の輪が出来上がった時、魔法少女はその場から走り去る。
そして、交差点の先にある橋のたもとまで来ると、勢いよくジャンプをして大空に飛び立った。
ひとりの老婆を救いながら名を名乗りもせず、その場を立ち去る魔法少女。
その出来事はニュースにもならず、その場にいた人のみが知るだけだった。
このお話は、そんな『超大型新人』魔法少女テクラが、色々やらかし、色々失敗し、色々絶叫するハートフルブラックコメディ。
そしてテクラはナレーターに問いかける。
「なあ、ブラックって何? どういう意味? それ私が苦労するってことやないん? なあ、なあ!」
――いやあ、テクラちゃん、ドイツ人なのに大阪弁うまいですね。
「はぐらかさんといてや! ブラックって何やねん。ちゃんと説明してーやあぁぁぁ!!!!!」
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