毒の花
海原シヅ子
花
窓辺で博士が笑っている。手には白い花を持っている。
昔から、興味のあること以外は全くの無知で、花なんて趣味じゃない私は、その花の名前をとうとうわからずに老いてしまった。
ただ、博士と、花と、そこに差す光、この完璧な構図がどうにも頭から離れなくて。私は、未だに初恋を捨てきれずにいるのかもしれない。
博士が、もしもまだ存命なら、どこかで穏やかに生きているのなら、伝えたい。あの時伝えそびれた想いを、皺だらけになっても尚、あなたへの執着が消えていないことを、どうか伝えたい。
昔のように動かなくなりつつある指に必死に力をこめて筆をとった。
もしこの稚拙な小説が博士に届いたら、博士はどう思うだろうか。
博士なら、なんて声をかけてくれるだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます