もう1人のみどり

第38話

小学生のとき、犬を飼っていた。心臓の発作が起きたのは、犬の散歩中。それで、うちではもう犬は飼わなくなった。マンションでも飼えるところなんていくらでもあるけど、俺は兄たちを不安にさせたくなくてずっと飼えなかった。

犬との因果関係なんてないって、わかってるのにね。責任押し付けてた。反省だな…。


今日も仕事を終わらせたら、さっさと帰ろ。


「足助先生、受付から来客の連絡がきてます」


内線を取った子がそんなこと言う。誰だよ、アポ取らないやつは。


「はい、足助です」


「先生、青森動物病院の緒方翠おがたみどりさんと言う方が訪ねてこられています。お約束でしょうか?」


なに?は?どういうこと?


「いいえ。この後は会議で予定は空いていませんとお伝えして下さい」


「では、お帰りしてもらいますか?」


「そうして下さい」


なにやら話している。


「先生、いつ予定は空きますかと…」


「ご用件はなにか聞いて下さい」


「あ、はい」


なんて面倒なやつだ。なにがしたい?


「糖尿病患者の件でお話しを伺いたいと…」


「それは、はま先生に伺うよう伝えて下さい。会議なので失礼します」


…元カノがなんの用?なにが糖尿病患者…ふざけやがって。そんなの俺に聞かないでも他の人でもわかる。

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