(三)-9

 それにもかかわらず、それらの機会もなく田舎の片隅に押し込められて毎日を過ごさなければならない。まるで狭いケージに押し込められて卵を生み続ける、工場の近所にある鶏舎の鶏と同じ扱い。

 多くの少女は来日した当初はここから逃げ出したいなんて微塵も思わない。しかし、鬱憤が溜まった少女たちはそんな生活に耐えきれず、たびたび脱走した。カムラとスークの前に脱出を試みたアイとセンペットも同じであった。


 マスターが日本語を補いつつ、カムラは恰幅のいい先客に説明した。

「そうやってね、他人の夢を食い物にする人間が、この世には少なからずいるのよね」

「この子たちの未来を盗んでいるわけですね」

「そう未来泥棒ってわけね」

「そういうことなら、■■にヒロシマに行こうか」

 客は言った。

 カムラとスークは互いに顔を見合わせた。

 二人は笑顔になり、大きく「うん」と頷いた。

 そうして二人はこの日の夜はマスターの家に泊まり、翌日、駅からこの客とともに出発することになった。


(続く)

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