あまのじゃく

草野蓮

病気の俺といつも来る幼馴染 2年秋

初めましての方がたくさん!あけおめ!長いの書いたよ!大体20000文字くらい!カクヨムコンに出せなかったよ(泣)もう一つ10000字以内の書くからね!(By 草野)




秋。夜ご飯も食べ終わり、俺はいつも通りベッドに寝転がりながら病院の窓越しに見える景色を楽しんでいる。


俺は生まれた時から重い心臓病を患っていて、この病院で入退院を繰り返している。病院のベッドでやることは何もなく暇なので、ボーッとしながら昨日の栗ご飯美味しかったなあとか考えながら本当につまらない。だけど、


「ヤッホー!りっくん!可愛い幼馴染のゆーちゃんがやってきたよー!」


この時間だけは特別な時間になるのだ。


「…なんだ。麻友か。べつに毎日来なくてもいいのに。」


だけど、俺はどうしても素直になれない。

献身的に毎日ここに来てくれる幼馴染にも。

それが俺、天野陸という男なのである。


「何よー?その言い草ー!毎日来てるのにそのそっけない態度はー?」


「別にいつものことだろ。そんなことより女子

ソフトボール部どうなってんの?」


「なんで、私よりその部活のこと聞くのー?

さてはりっくん好きな子が女子ソフトボール部にいるの?」


「ちっ…違げーよ」


「あーっ!その反応はいるんだ!誰だい?あかり?やよい?それともわ・た・し?」


麻友は自分自身を指差し、ウィンクをする。美人はこんな芝居がかった仕草も良く絵になるからずるい。


「…別にそんなんじゃねーよ。麻友がキャプテンになりそうだから気になってただけだよ。」


「ふーん。そうなんだ。…今日、私が女子ソフトボールのキャプテンに任命されたよ。」


「へー。」


「ちょっと!りっくんから聞いてきたのに何?

頑張ってー。とか無理すんなよー。とかゆーちゃん可愛いー。の一言くらいあっていいんじゃない?」


「最後は関係なかったよね。」


「あ、ばれた?」


そういい、麻友は舌を出して頭にこつんと自分の拳を乗せる。


「…そのアニメっぽいしぐさのやつ、やめた方がいいぞ。傍から見ればやばいやつになる。」


「ふふふ、はぁい。わかったよ。」


麻友は小さく笑った後に、気の抜けた返事をかえした。

あきれて小さくため息をついたあと、そういえばととある友人の所在を聞く。


「あっ。そういえば、健也どうしてる?」


「あぁ、鎌谷くんね。うーん…時々私にりっくんのことを聞いてくる以外は普通の高校生活を送ってるよ。部活のみんなと元気に話してるところも見るし。」


クラスのみんなが俺のことをなんとなく避けていた中、唯一よく話しかけてくれていた奴が健也だ。1年の途中までは学校に行ってたのだが、今は入院漬けの日々だ。

幸い理解のある学校だったから単位が取れるようにこの麻友を通してプリントやテストをやり取りしてくれている。


「そうだ!これ今日のプリントと、国語の課題と私がわからないところ。」


「ん。またか。見せてみ。」


問題をさらっと一瞥して見ると円や直線などの図形が複雑に絡み合った問題だった。


「あぁ。これは、こことここが3:4になるからこことここも3:4になって

あとちょっと見えづらいけどこことここが同じ角度だから。」


「…あぁ!だからこことここが同じになって、相似の関係になって…なるほどね。やっぱりりっくんて頭いいよね。」


「いや、そんなことないよ。そういう優菜こそ。この問題はあの有名な南館大学の過去問だろ。あのヒントだけで導けるのはすごいと思う。」


「ははっ。りっくんにはかなわないよ。私が30分にらめっこして解けなかった問題を10秒足らずで解いちゃうんだから。」


「ははっ。入院中、勉強くらいしかやることがなかったもんでね。」


「ふぅん。あっ、そういえばさぁ今日学校でこんなことがあったんだけどさぁ。」


そのあと、他愛のない世間話で盛り上がっていた。しばらくして、


「それでさー。…ってもうこんな時間!もうかえらなきゃ!」


麻友は時計をちらっと見ていきなり慌てだす。


「おーそうだな。あのこっわいおばさんに怒られるぞ。…もうかえりなよ。」


「人の親捕まえてそんなこと言うかなぁ普通。ま、もう帰らさせてもらうけど。」


麻友はサッサと身支度をして


「じゃ。そういうことで。また明日。」


「おう。」


麻友が部屋を出ると、足音が遠ざかる。


まだ、あんな感じで楽しく喋っていたかった。まだ帰ってほしくなかった。病室でたった一人になっている時間はとても不安で、不安で。


しばらくして、俺は寝転がりながらつぶやく。


「はぁ。素直になれないなぁ。」

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