第10話 マリエとのデート

「お願いします」

亮が文明に頼んでマイクを切った。


「なるほど、そういう訳か」

桃華は亮の話しを聞いて嬉しそうに言った。

「桃華、もし今度大きなテロがあった時は

命がけになるかも知れない。覚悟しておいてくれ」

「分かっているよ、亮」

桃華は亮の顔にキスをした。

「桃華」


「たまには私たちにもご褒美くださいね」

桃華が亮の顔を撫でた。

「ご褒美の件は考えている、今日の事はみんなに内緒で頼む」

「はい、二人だけの秘密ね。

でも良かったわ。もうすぐ歩けるわね」

「多分」

桃華は亮のお尻を叩いて出て行った。


~~~~~

「亮、迎えに来たよ」

祐希は病室に戻った亮の部屋に入り

ベッドに座り亮に体を寄りかかり

耳元で絵里子の行動を話した。

祐希はすっかり女性らしさが出ていて

桃華が出してくれなかったら、

祐希を抱きしめているところだった。


「わかった、絵里子さん頑張っているね」

「うん」

~~~~~~

5時15分きっかりにマリエは亮の病室に現れた。

マリエは真っ白なノースリーブのドレスに着替え

化粧をしたマリエは亮が今まで見た中で最も美しく

口紅を塗った赤い唇がみずみずしく輝いていた。


「マリエ、今日はとても素敵です」

「ありがとう、亮。嬉しいわ」

亮に褒められ微笑んでいるマリエの黒髪に付けた

ハイビスカスの花から甘い香りが漂っていた。

「本当に右側に花を付けるんですね」

「ええ、独身ですから」

マリエは恥ずかしそうにそう言って顔を赤らめた。

祐希はマリエの態度を疑いながら睨みつけていた。


マリエは慣れた手つきで亮をベッドから車にた移乗させた。

「ありがとうマリエ」

「いいえ」

介護の経験が無い祐希は

黙って見ているだけだったが、いつでも亮の

車イスを押せるように観察をしていた。

三人はタクシーに乗りワイキキビーチから

飛行場へ向途中ダウンタウンの先の港の雰囲気が漂う

飛行場の対岸のラ・マリーナ・Dと言うレストランだった。


そこはハワイの民族的な建物での入り口には

たいまつの火が灯されマリエは亮の乗った車イスを押して

店内に入った。


「ハワイらしいいいところですね」

亮は室内を見渡すと海の見える場所に

案内された。

「いらっしゃませ」

ウエイトレスが笑顔で亮に向かって

日本語で挨拶をした。


「このお店は1ヶ月くらい前にオーナーが変わって

 日本人のお客さんが増えたようですよ」

亮はマリエに言われて周りを見渡して

日本人客を確認した。


「亮、何を食べようか?」

マリエはメニューを亮に見せるとウエイトレスが亮に言った。

「料理の方はシェフに任せていただけませんか?」

「はい、いいですよ」

亮が承諾するとウエイトレスが厨房に入って行った。


夕日が水平線に近づき

海が真っ赤に染まっていた。

「綺麗ですね、夕日」

亮は久々に心の休まる時間を過ごしていた。

「綺麗な夕日」

祐希の目は心無しか潤んで

輝いていた。


テーブルの下でマリエに見えないように亮の手を握った。

「ママに亮を好きになると苦労するって言われた。

ねえ、亮裏の仕事って何?」

亮一瞬ドキッとしたが

絵里子は暗鬼を知らないのでDUN製薬乗っ取り

犯の一文字の犯罪を阻止した事など

犯罪阻止を言っているに違いなかった。


亮と祐希の会話を理解できずマリエは

二人をじっと見つめていた。

「祐希さん、僕は君をアシスタントとして

 仕事を手伝ってもらおうと思っている、

 今はアメリカと日本に離れているけど

 メールでやり取りして情報は交換しよう」

「分かりました」


「まずは水の製造状況、販売計画、販売状況

 を報告して欲しい」

「はい、それで亮さんの仕事は?」

「進行している仕事は随時、情報を送ります。

 理解しがたい部分はあるだろうけど」


「了解しました。信用してもらえて感謝します」

「ところで、身を護る格闘技を練習して欲しい」

「はい、高校時代までは空手をやっていました」

「うん、訓練は怠らないように」

「了解です」


「実は常に周りに敵がいる、と言うか敵が出来てしまうんだ」

「やはり、ママが言っていたスーパーヒーロー?」

「そこまでは無いけれど、まあ正義の為に動いている」

「わあ、興味がある!」


すると料理が次々に運ばれて来た。

「わあ、美味しそう」

マリエは二人の会話をさえぎるように

豪華な料理に声を上げた。

「これはハワイ料理ですか?」

亮は一口食べると一見大雑把な料理に見えたが

繊細な味付けに思わずマリエに聞いた。


「ううん、ハワイ料理をアレンジしているみたい、

フランス料理にも似ているし本当に美味しい・・・」

「そうだ、フランス料理。そして

醤油の風味やワサビも使われている。

 この味懐かしい気がします」

「やはり亮は日本人なのね」

マリエは亮が日本の味が懐かしいと

言われちょっと寂しい気がした。


~~~~~

レストランの西側は海の上のウッドデッキになっており

その上に亮たちのテーブルが有った。


そこに音も立てず人相の悪い男三人が

ゴムボートに乗って近づいてきて

柱にロープを繋いだ。


レストランの裏口には黒いSUVがゆっくりと走って

近づいてくると静かに停車した。



~~~~~

「マリエ、お兄さん釣り船の売り上げは良いんですか?」

亮はマリエに正直な話を聞きたかった。

「ううん、ボートのローンの支払いが時々滞っているみたい」

「もし良かったら僕がオプショナルツアーで

釣り船のチャーターの営業で協力します。

これでも旅行代理店を経営していますから」


「本当ですか?」

マリエは亮が色々な会社の経営に携わっていると言う

噂は耳にしていたが旅行代理店までとは

思っても見なかった。

「旅行代理店?」

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