第9話 桃華の治療

「絵里子さんは放っておいてそろそろ娘の買い物に行きませんか?」

真壁は栗田に気を使い笑いながら言った。

「そうですね、美喜さん後はお願いね」

「はい」


美喜は絵里子に目で合図をして二人は席を立ち

テラスの端まで一緒に歩いた。

「絵里子さん、亮の様子はどうなの?」

美喜は真剣な顔をして絵里子に聞いた。


「下半身の麻痺があってまだ歩けないの」

「下半身の麻痺ってあそこも?」

「そうよ」

「亮はずいぶん気落ちしていたでしょう」

「ううん、亮の面会の許可が下りた日

薬と塗り薬のレシピ送ってきたの。

それをDUN製薬にオーダーしてこっちへ持って来たわ」


「亮はぜんぜん負けていないのね」

「そう、亮は不死身だから」

絵里子は漢方薬師としての亮を信じて美喜に答えた。

「でも、どうして絵里子さんしか面会できないのかしら?」

美喜は絵里子しか亮に面会できないのを疑問に思った。


「うん、それはハイジャック犯のお金の

 在り処を亮が知っていると疑われているらしいわ」

「まあ。相変わらず亮は事件に巻き込まれるみたいね」

美喜は亮がまた事件を解決していく事に

期待していた。


「うふふ、それと明日、民政党の幹事長がハワイに来て

 彼らとゴルフをするみたい、その間岡村幹事長の娘さん

のハワイ観光に祐希がお付き合いをするの」

「面白そうね、不動産会社の社長、銀行員、政治家が集まれば

 やることは決まっている」

「そうよ、面白そうでしょう」


「亮のビジネスに繋がりそう」

「うん、美喜さんはどうして京浜不動産がメインバンクじゃない

 四菱銀行と付き合い始めたか理由を栗田さんから聞き出して」

「了解、任せてください」

絵里子と美喜は嬉しくなって笑いながらハイタッチをした。


ニコニコ笑いながら戻ってくる絵里子と美喜は

輝いていた。


~~~~~

「小妹、美喜さんはおじさんとお買い物

絵里子さんは中年男性と楽しそうにお話しているわよ」

蓮華が小妹に無線で話しかけてきた。

「よく分からないけど、何か目的があるのよ。

 それより絵里子さんをしっかりガードしてね」


「了解。それで亮の様子は?」

「元気よ。直ぐに歩けるようになるわ」

「はい」

「そういえば桃華は?」

「それが・・・」


~~~~~

亮はセントラル病院のリハビリルームのベッドにうつ伏せになった。

「あのう、このローションでマッサージしてください」

亮がうつ伏せのままローションを理学療法士に渡した。

「你好/コンニチワ」

「中国的人吧?/中国人の方ですか?」

亮は中国語で聞いた。


「うふふ、そうよ。亮」

「ん?」

亮は体を捻って見るとそこに桃華がいた。

「わあ!桃華」

亮は狼狽した。

「大丈夫だよ、これでも鍼灸師だから」

「違う、何故お前がここにいる?」

「私がここに居ちゃダメ?」


「いや、そういう訳じゃなくてどうやって?」

亮は桃華が病院に潜入した事が不思議だった。

「うふふ。私は暗鬼よ、何処にでも潜入できるわ

それより、少しでも亮の回復が早くなるように

 私がマッサージをして鍼を刺してあげる」


「あ、ありがとう。桃華」

亮は力を抜いてうつ伏せになった。


元々暗殺集団の暗鬼の人間は

針1本で人を殺せるように

ツボと急所刺す訓練を受けていた。


桃華の亮に対する施術は

どんな理学療法士よりも勝っていた。


桃華の手から発する気の温かさは

とても心がこもっていた、

亮への思いと愛は亮の足と腰の神経を

少しずつ繋いでいた。


その思いは亮に通じ亮の目から涙がこぼれていた。

「ありがとう、桃華」

「何か言った?」

「いいえ、なんでもないです」

~~~~~


「ロビン、盗聴していた犯人に発信機と盗聴器付けたわよ」

小妹がロビンに連絡をしてきた。

「場所は何処だ?」

「セントラル病院の北側の道路に止まっている

白いセダン、ナンバーはaloha33267」

「了解」

ロビンはパソコンのモニターに監視衛星の映像を映した。


「OK、今ロックオンした。ありがとう小妹」

「今夜、亮が外出するので監視お願いします」

「なんだって、亮は歩けるようになったのか?」

「ううん、車椅子で看護師のマリエと祐希と

三人で外へ食事に行くんだって」


「おいおい。亮は看護師を物にしたのか?」

「ううん、まだ物にしていない、あそこ動かないから」

「そうか、まさかその看護師と盗聴している

 連中がつるんでいないだろうな」

ロビンは車椅子で体の自由が利かない亮が心配だった。

「ロビン、ひょっとしたら亮は考えが有って

 出かけるんじゃないかしら」


「亮は我々の力を期待しているとでも言うのか」

ロビンは亮がロビンの力を利用しているとは信じがたかった。

「ううん、亮は必ず自分の力でやるはず」

「分かった。小妹、亮を護ってくれ」

ロビンは小妹に亮の警護を頼み無線を切った。

~~~~~

施術中、桃華は亮の耳元で囁いた。

「亮、みんなに伝えておく事有る?」

「今ハワイに誰が来ていますか?」

「私が知っているのは劉文明先生、ロビンと私と蓮華、小妹とマギー、

絵里子さんと祐希さんと美喜さんの9人です」

桃華にとって劉文明はクライアントで特別な人間で

先生と呼んだ。


「文明兄さんが来ているんですね」

「はい」

「仰向けになって下さい」

桃華は亮仰向けにすると鼠径部と太腿のマッサージをした

「亮さんアソコが反応しているんですけど」

「うん、わかっている」


「ヘチマはオーバーだけど大きなズッキーニはあるわね」

桃華はいきなり亮の耳たぶにキスを乳首を

いじりはじめズッキーニをしごき始めた。

「桃華、いきなり何するんだ」

「溜まり過ぎると女の誘惑に負けたり判断力が鈍るの

出しちゃいましょう」


「ええっ」

亮は桃華のテクニックに負けて発射してしまった。

「あ、ありがとう」

亮は放心状態で言った。


亮はベッドに横になりながら奥歯をカチカチと鳴らして

マイクのスイッチを入れた。

「ロビン、聞こえるか?」

「感度良好、さっきスイッチを切ったろう」

亮は小妹との会話の時スイッチを切っていた。


「すまない、小妹が掃除婦に化けて部屋に入ってきていた。

 僕の声しか聞こえない会話は混乱をきたすだろう」

亮はスイッチを切った理由を説明した。

「なるほど、ところで今何処だ?」

「リハビリルームで施術を受けている」

「会話を聞かれて大丈夫なのか?」


「問題ない、今終わった。何故か施術をしているのは

桃華なんだ。

 ところで文明兄さん居ますか?」

「亮、文明だ!具合はどうだ?」

亮の声を聞いて文明が返事をした。

「ああ、兄さん。まずまずです。

早く自分の足でトイレに行きたいです」

「贅沢を言うな!命があっただけでも儲けものだ」

文明は亮が危篤状態で心臓が何度も止まったのを知っていた。


「はい、兄さんジャック・モーガンの

動きが知りたいんですけど」

「ああ、暗鬼が掴んだ情報ではジャック・モーガンは

現在シンガポールにいる」

「そうですか。となると近いうちの大きな

テロを起こすかも知れません」

「何故だ?」

「ジャック・モーガンのやり口はテロを起こして

関連株や為替で儲けているんです」

「それと今の亮にどう関係がある?」


「それが今度のハイジャック犯のジェイクを

動かしていたのがジャック・モーガンじゃないかと

思ったんです。そして今やシンガポールは

アジア金融の中心地となっています。

そこで大きなお金を動かすのでは無いかと」


「なるほど・・・わかった、シンガポールには

うちの銀行も商社もある。直ぐに情報を収集しよう」

「お願いします」

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