第7話 栗田の話

「小妹、悪いけど絵里子さんを

ガードしてくれないか。絵里子さんを人質に

 僕を脅して20億ドルの在り処を聞きに来る可能性がある」

「うん、それは大丈夫。蓮華と桃華がもう付いているから

 それとマギーは海辺から監視している」

「ありがとう、それでジェニファーに言って

ここにいるFBIは何をしているか調べてもらって欲しい」

「OK」

小妹はマイクを持って車椅子に戻し病室を出て行った。


~~~~~

「お待たせ、ご希望の物を持ってきたわよ」

マリエはサンペレグリノを3本亮に見せた。

「ありがとうマリエ、もう1つ頼みたい事があります」

亮は枕の下から絵里子が持って来たローションを出した。


「何これ?」

「マッサージローションです。これを腰に塗ってくれませんか」

「ええ、良いですけど・・・」

マリエは亮をうつ伏せにしTシャツを捲りあげてローションを背中に

垂らすとその不気味な色に気味悪そうな顔をしていた。

「これは僕が作ったハーバルエキスです」


「そうか亮は薬剤師か・・・色は悪いけど香りは良いわ。効果があると

 いいけど」

「このローションは植物エネルギーの作用で治癒能力を高めるんです」

「うふふ、明日になったら歩けるようになるかもしれないわね」

マリエはまったく亮の言う事を信じていなかった。


しかし、亮の体はそのローション効果で

腰が熱く反応し臀部の筋肉がピクピクと

反応してきた。


「あら、お邪魔だったかしら」

買い物を終えて帰ってきた絵里子と祐希と絢香が

病室のドアを開けて言った。

「絵里子さんちょうどよかった、オシッコしたかった。

マリエ、ありがとうもういいよ」

亮はうつ伏せでお尻を出したままマリエに礼を言った。


「あら、私でよかったのかしら?」

絵里子は亮のたくましいお尻を叩いた。

「パチン」

病室に響く音を立てると絵里子はベッドの脇にある

尿瓶を持って亮を横向きにさせ

亮の性○を握った。


「えっ!」

絵里子は小さな声を上げて亮の顔を見た。

それを見た祐希が口を塞いた


~~~~~

亮にお金と下着と洋服を置いて

病室を出た絵里子は絢香をベビーシッターに

預け祐希とアラモアナショッピングセンターに着いて

真壁に電話を掛けた。


「お待たせしました。絵里子です」

「いや、今着いたところです」

絵里子が顔を上げると目の前に真壁が立っていた。

絵里子は祐希を昨日時差で寝てしまった姪として紹介をした。


「こんにちは真壁です」

「黒崎祐希です」

「祐希ちゃんは今ハーバード大学に

留学しているんです。凄いですね」

バーバード大学と聞いて真壁の態度が変わった


「昨日はありがとうございました」

絵里子は深々と頭を下げた。

「いやいや、スマートフォンを貸しただけで

そんなに丁寧に礼をされると恐縮してしまうよ」

真壁はとても機嫌がよかった。


「栗田さんは?」

「彼はちょっと用があってね、

もう直ぐこっちへ来ます。

さあ、お昼ご飯を食べましょう」

真壁はそう言って絵里子と祐希の方を叩いた


絵里子と祐希は真壁と3階のロンギーズに入った。

そこはオープンエアでアラモアナ・ビーチ・パークの観える

素敵なレストランだった。


「絵里子さんはハワイに詳しいんですね」

「知人のコンドミニアムに時々遊びに来ていました」

「あはは、それは凄い。ところで失礼ですが、

ハーバード大学に留学とは相当お金がかかるのではないですか?」


「はい、学費が日本円で55000ドルで寮費、生活費代を含めると

年間800万ドルくらいです」

祐希を丁寧に真壁に説明をした。

「ほう」

真壁は祐希の家の資産状況を知って体を乗り出した。

「ところで、栗田さんは何処の銀行ですか?」


「銀行員と分かりますか?」

「はい、一目で」

「本人に聞いてみるといい、口座を作ると

言ったら喜んで教えてくれるでしょう」

真壁は絵里子や祐希のお金を利用する事を考えていた。


「知り合いにお金持ちがいるんでしょうね」

「はい、いますよ」

絵里子はオチャメな雰囲気で笑った。

「それは興味あるなあ、どんな人ですか?」

「私は大企業の社長さんとか病院の院長とか、

その他ロビン・ハイド、劉文明それから

スーパーモデルのシンディです」

「私はランド不動産のCEOキャシーランドさんとか

ピースマートの社長の息子さんとか」


「あはは、それは私でも知っている。

そのうちの三人はフォーブスに載るほどの

金持ちだしシンディが日本に来た時、

銀座のホステスにねだられてファッションショーへ

行ったよ。凄かったなあ」

真壁は祐希どころか絵里子まで馬鹿にしていた。


日本の経営者は自分のレベルで物事を考え、

お金を持っている人間には媚びるが

自分より年下や女性、収入や学歴が低いものは

上から目線で高圧的な態度を取る。

銀座で多くの男を見てきた絵里子は

真壁もこんな人物だろうと笑われた事は

気にしていなかった。


「絵里子さんもっと現実的な人はいないかね」

「では、團亮さんは知っていますか?」

「ん?」

亮の活躍は一般人には伝わっていなかった。


「銀座の美宝堂の息子さんです」

「ああ、美宝堂なら知っている。

相当な資産家らしい親しいんですか?」

「はい、かなり」

真壁は急に態度を変えて絵里子の手を握った。

「是非、紹介して欲しい、今蒲田に建築中の

マンションがあるんだが京浜地区は免震にコストが

掛かって値段を高く売らざるおえないんだ」


「それは、分譲マンションを團さんに紹介する話ですか。

それとも別な話ですか?」

「それは色々と」

真壁は真剣な顔をして答えた。


「お待たせしました」

そこに栗田がテーブルに来た。

「絵里子さんこの続きは後で」

「はい」

絵里子は真壁の動きを見ているのが面白かった。


「真壁さん、明日一緒にゴルフをする事になりました」

「おお、それは良かった。ありがとう栗田君」

真壁と栗田が笑いながら握手をした。

「私達、お邪魔かしら?」

絵里子が席を立とうとすると真壁がそれを止めた。


「ま、待ってくれ。絵里子さん明日時間があるかな?」

「ええ、ありますよ」

「ある人とハワイ観光に付き合ってもらえないだろうか?」

真壁が言うと栗田が露骨に嫌な顔をして首を横に振った。


「真壁さん!」

「いや、彼女は信用できると思う」

絵里子は真壁に言われてニコニコと笑っていた。

「でも、黒崎さんとは昨日会ったばかりですよ」

栗田は相変わらず人を見下した言い方だった。

「すみません、栗田さんは何処の銀行ですか?」

「四菱銀行です」


「あら、京浜不動産さんのメインバンクの

いなほ銀行さんではないんですね」

女の絵里子が簡単に答えるので真壁と栗田は顔を見合わせ

真壁が絵里子に聞いた。

「絵里子さんずいぶん詳しいですね」

「ええ、株を少々やっているもので会社四季報はよく見ます」

「ほう、女性では珍しいですね。株好きとは。

栗田君絵里子さんは美宝堂の息子さんと親しいらしい」

真壁は栗田に亮の話をした。


「えっ、黒崎さんは團亮さんをご存知なんですか?」

「はい、栗田さんよくご存知ですね」

絵里子はマスコミ嫌いの亮の事を知っている人間が居た事に驚いていた。

「はい、私は政治家さんとのお付き合いが有るもので

 團さんの話しはよく話題に出ています。アメリカに

 太いパイプを持っているそうですね」


「うふふ、そうですね。この前大統領とお酒を飲んだと言っていました」

絵里子は太いパイプと聞いて別な事を思い出していた。

「おいおい、そんな話聞いていないぞ、團亮って何者だ?」

真壁が二人の間に割り込んだ。

「團亮さんは年齢が28歳、

東京大学薬学部卒業で薬学博士、ハーバード大学大学院で

経営学を学んでMBAを持っています。

株式会社プラウ、社長さんです」


絵里子はそれ以上多くを語らなかった。

「プラウ?そんな会社聞いた事もない」

「いずれ分かりますわ」

真壁は聞いた事も無い会社の名前を聞いて

亮はただの金持ちのボンボンだと思ってホッとしていた。

「ちょっと、トイレに行って来る」

真壁が席を立つと絵里子は財布から名刺抜き栗田に見せた。

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