大切なあなたに幸せを

フィリア

プロローグ

奇跡

 奇跡が起こったんだ。僕こと柳沢秀(やなぎさわしゅう)は死んだと思っていた。だって、時速100キロ超えのトラックに真正面から衝突してしまったから。普通、生きているなんて思わないだろう。全身骨折に内臓損傷。ここから回復するのなんて絶望的だ。ゆえに、家族や友人からも驚かれた。なにより、僕自身が1番驚いた。


 事故に遭った時は鮮明に覚えていた。青信号になったのをしっかりと確認して、1人の後輩と共に前に進んだ。だが、聞こえてきたのは急ブレーキを踏む音。耳をつん裂くほどの轟音を響き渡らせながら後輩に向かって突っ込こむトラック。それを見た僕は、咄嗟に体が動き、後輩を突き飛ばした。そして、生きていても一生聞くことのないような音と共に、ぶつかった。


 僕を手術した医者によると、僕は死んでいたらしい。全力を尽くし僕を救おうとしたが、僕の体は限界だったらしい。霊安室で白い紙で顔を覆われ、周りには嘆き悲しむ家族や友人。みんなが別れを告げようとしている中、僕は空気を読まずに生き返った。そりゃ、みんな唖然としてたよ。親友からは空気読めよと怒られた。でもみんな心の底から喜んでくれた。あり得ないことが起こったんだ。この日から、僕は奇跡というものを信じるようになった。だって、僕が経験したものは奇跡以外の何物でもなかったから。

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