Red Spinel ファンタジー〜古代をつなぐ深紅のプリンセス〜

もあこ

第1話 憂鬱な1日のはじまり

朝日がカーテンの隙間から入り込む。


「もう朝か、、またあんまり眠れなかったな」


毎日、朝がくるのが憂鬱で

胃が押しつぶされそうに痛くなる。

私は誰もいない広いリビングに降りて写真に向かって挨拶をする。


「おはようパパ、、」


写真のパパは笑顔だから、ほんの少しだけ胃が痛くなるのが和らぐ。

私の名前は月志摩まゆら私立の中学に通っている。もうすぐ14歳。

明日、8月1日が誕生日。

そして、パパが天国へ旅立った日、、


パパは2年前に事故で亡くなった。

老舗のジュエリーブランドTUKISIMAの社長をしていて、優しくてカッコよくて本当に自慢のパパだった。

ママも優しくてジュエリーデザイナーでお料理が上手で美人で世界で一番大好きだった。

休みの日は3人でお出かけもして、、

裕福な家庭に恵まれて幸せだった。


それなのに、パパが亡くなって1年が経ったある日ママは変わってしまった。


ガチャッ、、、


玄関のドアが開く音が聞こえた。

ママが1ヶ月ぶりに帰ってきたのだ。

知らない男の人も一緒だ。


「ママ、、おかえりなさい!!」


ママは私を睨みながらバックから5万円を出してテーブルに投げつけた。


「今月分の生活費

こうやってお金置いていってあげてるだけ感謝しなさい。」


ママは、1年前からほとんど家にいない

毎回違う男の人達と遊んだりしていて

月に1回はお金だけ置きにくる。


「邪魔な存在でも、死なれたりしたら面倒くさいからねー。

私に迷惑だけはかけないでちょうだいよ。」


ママは私に冷たくそう言うと

男の人と旅行の話しをしだした。


「ママ!!明日は帰ってくるよね?」


「はぁ?明日?」


ママの表情は冷たい。


「明日は私の誕生日で....パパの命日でもあるから...」


「あー。そんなどうでもいい事忘れてたわ〜

私にはもう関係ない事だからねー。」


そう言うと男の人と腕を組みながら出て行ってしまった。


「どうでもいい、、か、、」


私の心はまたズタズタに引き裂かれたように痛い。

1年前は、あんな優しかったのにまるで別人のように変わってしまった。


変わったのはママだけじゃない

学校の友達、先生、親友の玲も変わってしまった。

みんなからイジメられるようになって

毎日学校に行くのが憂鬱だ。

だけど今は、夏休みだからみんなとは会うことはない。だから気持ちが少しだけ楽になる。


ママは冷たく変わってしまったけれど、生活費を置いていってくれているから食べる物などは困っていない。

中学生に5万円は大金だ。

私は物欲もないからほとんど使わずに残っている。

お金はあるけれど、、、一人ぼっちは寂しい....

私は適当に朝食を済ませて図書館へ向かう準備をした。


小学生の頃は、病気がちで学校を休んでいた。

中学生になったら学校を休まずに行って勉強頑張るってパパと約束したから、1人ぼっちでもイジメられても、勉強だけは頑張るの。

図書館で勉強してる時が、一番落ち着く。

特に数学の問題を解いている時が楽しい。



「あっ!もうお昼過ぎてた..

とりあえず、今日はここまでやったし帰るか...」


図書館を出ると3人組が前から歩いてくる。


「ウソ...玲たち、、、」


隠れる場所もなく、図書館に急いで戻ろうとするも、玲に気づかれ後ろから髪を思いっきりひっぱられた。


「ねぇ!ウチらの顔みて逃げようとしたよね?」


「痛っっ....!離してっ....!!」


「ごめんなさい、離して下さい。じゃないの?

ウチら退屈してるんだよねー。

ねぇ、、、アンタ暇ならちょっと付き合ってよ。」


玲たちは、クスクス笑いながら私の腕をつかみ学校の方へ向かった。

私は怖くて玲たちに逆らえなかったから我慢するしかなかった。

1年前までは、仲が良い親友だったのに

玲を中心にクラスのみんなが私をイジメるようになった。


「さっさと歩けよ!!」


玲たちに連れて来られたのは学校のプールだった。


「25m泳いだら、今までの事許してあげる」


「玲!!私泳げないよ!」


「うん。知ってる。」


玲は笑顔で答えた。


「だから連れてきたんじゃない。

アンタ目障りなのよ!!

ずっと前から思ってた、、

私が森内君の事好きなの知ってたくせに、、

森内君と楽しそうに会話したりして、、」


「違うよ!!玲、、誤解だよ!

私は森内君の事なんとも思ってないよ!」


「告白されてたじゃないっ!!

私見たんだから、アンタが告白されてるところ。」


「でも私、断ったよ!!

だから、森内君とはなんでもないんだってば!」


「ほん、、っとに........目障りなのよ!!!

消えて!!」


ドンっ!


玲は私をプールに突き飛ばした。


「きゃぁッ-----!!

玲っお願い助けて!!

みんな助けてお願いっ....ゴボッ...」


「アンタなんて消えればいいのよ!!

そのまま死ねば?」


玲たちは溺れる私を見捨てて足速に去って行ってしまった。

私の意識は遠のいていく。。

微かに、赤い光が私の体を包みこんでいるように見えた。

その瞬間、私は死ぬのだと思った。


何時間経ったのだろうか。

西日の眩しさで、私は微かに目を覚ました。


「.....あれ?ワタシ...生きてる。」


気がつくとプールサイドに横たわっていた。


「誰かが助けてくれた...?」


でも、一体誰が、、、

私は自分が生きていて助かったことよりも、

玲に言われた「消えて」「死ねばいい」って言葉が胸に突き刺さる。


「私...なんで生きてるの...」


急に涙が溢れてきた。

私なんていなくなればいいんだ。

そう決心した私は、学校の屋上に向かった。

日が沈んでいく。

屋上に向かった私はゆっくり、屋上から下を覗く。

「.................」

決心したはずなのに怖い。


「死ぬ勇気もないなんて....」


キーンコーンカーンコーン!!


学校のチャイムの音にびっくりして私はバランスを崩してしまった。


「ウソ......っきゃぁぁぁー!!やだ!やっぱり死にたくないよ!!」


私は今度こそ死んでしまうと思った。

その時、赤い光が私の身体を包み込み、ゆっくり地上に着地した。


「何...この光は....」


赤い光はさらに光だし目の前が眩しくなったその瞬間、声が聞こえた。


「お前には生きてもらわないと困る」


赤い光の中から真っ黒なカラスがこちらを見ている。

私は怖くなって全速力で家に向かった。



ガチャッ!!バタンッ!!

急いで玄関を開け鍵を掛けて、部屋に入ってベッドの中に潜った。


「ハァ...ハァ...!!

何、さっきの!!何なのー?!」



突然の恐怖な出来事で、怖くて

いつのまにかそのまま寝てしまっていた。

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