第447話 幸福の祭壇

 しばらく進むと、地上に巨大な白い皿が置いてあった。


 大きさは、直径五〇メートルくらい。

 『幸福』とは書かれていない。


 その近くに、スタンド看板のようなものが置いてある。


「なんだあれは? またわななのか?」


「いいえ、違うようなのです」


「なら、あれはなんなんだ?」


「わたくしの電球が、あの看板に書いてあると言っているのです」


「面白そうな予感がするざます! ヒモノ、見に行くざます!!」


「はいはい、分かったよ」



 地上に下り、看板を見てみた。


 『幸福の祭壇』

 『この上に不幸な者が乗ると、良いものが出て来るかもしれないような気がする』

 『乗ってみれば?』


 そこには、このような意味の文章が書いてあった。


 この皿は祭壇なのか?


 まあ、そこはどうでもいいか。


「何これニャ? 訳が分からないわねニャ」


「まったくねッピ」


「なんか面白そうざますね! ヒモノ、試しに乗ってみるざます!」


「えっ!? 危険はないのか!?」


「わたくしの電球が、ないと言っているのです」


「なら、乗ってみるざます!!」


「はいはい、分かったよ」



 皿の上に乗ってみた。


「君さぁ、世の中をなめているんじゃないサイダンッ?」


 下の方から声が聞こえてきた。


「えっ? 皿がしゃべっているのか?」


「皿じゃなくて、祭壇だよサイダンッ。幸福の祭壇サイダンッ」


「ああ、そうだったな。失礼した」


「次からは気を付けてよサイダンッ」


「分かったよ」



「それで、どういうことなんだよ?」


「君には強力な特殊能力があって、美人の妻がたくさんいるサイダンッ。これは幸せそのものだねサイダンッ」


「えっ!? なんでそんなの分かるんだ!?」


「『壇上にいる相手のことがなんとなく分かる能力』という特殊能力のおかげだよサイダンッ」


「そうなのか」


 妙なものがあるんだな。


「話を続けるよサイダンッ。そんな状態で、ここに乗るとか、ふざけているにもほどがあるよサイダンッ」


「いや、不幸なこともそれなりにあったと思うんだが……」


 家や貯金がなくなったり、ここに閉じ込められたり、セレンさんとイリーセさんにおしおきされまくったりとかな。


「はぁ、そんなの特殊能力でどうとでもなるでしょサイダンッ」


「そうなのか?」


「そうだよサイダンッ。というわけで、君はおしおきねサイダンッ」


「ええっ!? なんだそりゃぁっ!? そんなのあるのかよ!?」


「あるよサイダンッ。看板に書いてあったでしょサイダンッ」


「いや、そんなのなかったぞ!」


「あっ! ヒモノ、下の方に『幸せな者が乗ったら、おしおきするよ』って、すごくちっちゃく書いてあるッスよ!!」


「な、なんだって!? そんなの詐欺だろ!?」


「問答無用だねサイダンッ。それじゃあ、いくよサイダンッ」


「いってっ!? なんじゃこりゃぁっ!?」


「ヒモノさん、どうしたのッピ!?」


「急に足の裏が痛くなったぞ!? なんだよ、これは!?」


「今のは私の特殊能力『足の裏に激痛が走る能力』だよサイダンッ」


「そんなのも使えるのかよ!?」



「はい、というわけで、おしおきは終了だよサイダンッ。祭壇から下りてねサイダンッ」


「分かったよ」


 皿から下りた。



「やはり面白いことが起こったざますね!」


「面白くない! こっちは痛かったんだぞ!?」


「私ちゃんは楽しめたざます! なかなかのリアクションだったざますよ!!」


 クソッタレめ!



「はい、次の方どうぞサイダンッ。不幸だったら、豪華かもしれない賞品が出るよサイダンッ」


「誰か乗ってみるか?」


「なら、あーしが乗ってみるッス!」


「トーリさんは不幸なのか?」


「鳥類なのに、鳥類扱いされなくて、不幸ッス! 後、食べ物扱いされるときもあるッス!」


「そ、そうなのか……」


 それは仕方ないのでは?



「それじゃあ、乗ってみるッス!」


 トーリさんが皿の上に乗った。


「いらっしゃいサイダンッ。それじゃあ、判定するよサイダンッ」


「お願いするッス」


「うーん、これは微妙に不幸だねサイダンッ」


「えっ、微妙ッスか!?」


「君の言っていたところは不幸だけど、他は幸福みたいだねサイダンッ。良い仲間に恵まれていたり、美味しいものをよく食べていたりするみたいだからねサイダンッ」


「確かにそうかもしれないッスね」


「そんな君には、これをあげようサイダンッ」


 皿から筋骨隆々で小麦色の人間の手が出て来た。


 その手のひらに『幸福』と大量に書いてあるリンゴのような果物が載せられていた。


 あいつは、ああいう特殊能力もあるのか。


「それはなんだ?」


「『食べると幸福なことが起こるかもしれない果物』だよサイダンッ。後で食べてみてねサイダンッ」


「ちょっと納得いかないところもあるッスけど、もらっておくッス」


 トーリさんが果物を受け取った。


 皿から出ていた人間の手が消えた。


「それじゃあ、下りてねサイダンッ。次の方どうぞサイダンッ」



「では、次はワタクシが乗ってみますでございます」


「セイカさんが? 君、不幸なのか?」


「不幸に決まっているでしょうでございます! ワタクシがいくら努力しても、ヒモノさんがまったく生殖活動してくれませんからでございます!」


「それは仕方ないだろ!? 子育てしている場合じゃないのだから!」


「今はそんなことを言い合っている場合じゃないでげすぜ」


「そうでございますね。とりあえず、乗ってみましょうでございます」


 セイカさんが皿の上に乗った。



「こ、これはすさまじく不幸だねサイダンッ!」


「ええっ!? そうなのか!?」


「そうだよサイダンッ! やることすべてが否定されて、キツいおしおきを何度も受けているみたいだからねサイダンッ!」


「分かっていただけて、うれしいですでございます」


「そんな君には、これをあげようサイダンッ」


 また人間の手が出て来た。


 その手には、リンゴジュースみたいな色の液体が入った、透明な一升瓶のようなものが握られていた。


「これはなんでございますか?」


「食べると幸福なことが起こるかもしれない果物を濃縮したジュースだよサイダンッ。果物の状態よりも、幸福なことが起こる可能性が高くなるんだよサイダンッ」


「そうでございますか。では、ありがたく頂戴いたしますでございます」


 俺はおしおきで、セイカさんは賞品をもらえるのか。


 なんか納得できないなぁ……

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