第420話 英知の結晶がそれ?

 次の日。


 テントから出ると、またみんなが祈っていた。


 毎朝よくやるなぁ。


 おや?

 ラエちゃんとルラタニーテまで祈っているぞ。


 なんでだ?



「おはようございます、我が神よ」


「おはようエガリ」


「おはよう、ミィカ、ラエちゃん。ラエちゃんもヒモノ教に入ったのか?」


「そうだよエガリ」


「なんで入ったんだ?」


「信者たちに『伴侶は信じておけ』って、言っちゃったからねエガリ。私がやらないわけにもいかないでしょエガリ」


「そうなのか」


 律義だなぁ。



 朝食を取り、支度を済ませた。


「よし、これで準備完了だな」


「ヒモノさん、今日はどうするのッピ?」


「そうだなぁ。ここでやるべきことは、食料などの補給と、チカさんの言っていた場所、本屋や図書館、ラエガリーガ教の神殿に行くことだったな」


「壊されてない建物で、のんびりしたいでナンス!」


「できれば宿が良いでナス~!」


「うまいものも食べたいでゴザル!!」


「はいはい、分かったよ」


「まずは何をするのニャ?」


「補給ができそうな場所ってあるのか?」


「帝都内にさまざまなお店がありますマチ。そこを見ていきましょうマチ」


「本屋も図書館も、帝都にあるわよジナ」


「ラエガリーガ教の神殿も、ここにあるよエガリ」


「そうか。では、まずは帝都内の探索をしようか」


「そうねッピ」


「それじゃあ、出発しよう!」



 帝都内を歩いている。


「どこも壊れているな」


「大きなミョガガベが、人間を探すために家を破壊していたからねジナ」


「そうなのか」


 マチエーザたちは怖かっただろうな……



「むっ、ここに何かありそうでございますよ!」


「ここは服屋があったところねチセ」


「何か残っているかもしれないわねジナ。探してみましょうジナ」


「そんなことして良いのか?」


 火事場泥棒になるんじゃないか?


「皇帝が残っているものは適当に使って良いって言ってたから、問題ないわよチセ」


「遠慮なくもらっていきましょうジナ」



「ガレキの中で作業するなら、これを身に着けた方が良いのだよ」


 レーアさんがスキー用ゴーグル、黒い口と鼻を覆う形状のマスク、黒い軍手を差し出してきた。


「ありがとう。これも『恋愛に必要な道具を出す能力』で出したのか?」


「その通りなのだよ」


「マスクと軍手を、何に使うんだ?」


「マスクは夜の尾行時など、軍手は登山デートやゴミ拾いデートの時などに使うのだよ」


「そ、そうなのか……」


 もしかして、恋愛に必要な道具を出す能力って、なんでも出せるんじゃないか?



「おおっ、こいつはお宝でげすぜ!!」


「やりましたでございますよ、ヒモノさん!!」


「何があったんだ、ノゾミさん、セイカさん?」


「ヒモノが好きそうな女用の下着を見つけたでげすぜ!」


「さっそく雌たちに着せて、生殖活動をしましょうでございます!!」


「また不潔なことをしているようですね!」


「おおっ、セレン、ちょうど良かったでげすぜ!」


「さあ、これを着てくださいでございます!」


「こ、こんなものを不潔なもの、お断りです! 洗浄します!!」


「服や体がまったく傷付かないタライ、かき氷、足の小指に激突するタンスもくらうでござんす!!」


「「「ぐああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」」」


 ぬるま湯をぶっかけられた後、頭頂部にタライをくらい、顔面にかき氷をぶつけられ、両足の小指に何かをぶつけられた。



「この不潔なものは捨てておきますよ!」


 セイカさんたちが見つけたものは、捨てられてしまった。



「ヒモノさん、着れそうな服が見つかったよチセ」


「他の場所に行きましょうジナ」


「分かったよ」



「ここが本屋だったはずですマチ」


「ここも壊されているわねッピ」


「読めそうな本がないか探してみようチセ」


「本は英知の結晶だからねジナ。失うのはもったいないわジナ」


「そうだな」



「こ、これはでござんす!?」


「どうしたんだ、イリーセさん?」


「参考になりそうな本を見つけたでござんす!」


 イリーセさんが『鼻フックの書』というタイトルの本を掲げながら、そう言った。


「鼻フック!? そんなものが、なんの参考になるんだよ!?」


「無論『感情を抑えることができそうなものを出す能力』で出すでござんす!」


「今度は鼻フックをされるのか!?」


「ちょっと読んでみるでござんす!」


 イリーセさんが本を読み始めた。


 頼むから、参考にならないものであってくれよ!!



「こ、これは、実に参考になるでござんす!!」


 ええ……

 なるの?


「さっそくヒモノで試すでござんす!!」


「なんで俺で試すんだよっ!?」


「ヒモノが一番やりやすいからでござんす!」


「ヒモノがエンターテイナーだからざますね!」


「ええっ!?」


「では、いくでござんす! 名付けて『服や体がまったく傷付かない鼻フック』でござんす!!」


 イリーセさんがそう言った直後、俺の鼻の両穴が思いっ切り上に引っ張られた。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!!!! 痛い、痛いって、イリーセさん!?」


「痛くなければ意味がないでござんす!」


「ひどすぎ!?」



「今のは、実に面白かったざます! ヒモノのエンターテイナーとしてのレベルが、また上がったざますよ!」


「そんなのうれしくないっての!!」

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