第238話 美術館の雑貨屋

 頭痛が治まった。


 おのれ、トイレ力のステータス令嬢め……


 ひどすぎるぞ……



「ヒモノさん、大丈夫なのッピ!?」


「あ、ああ、なんとかな。それよりも、なんとか金を稼がないと……」


「アーティ、また絵を描きなさいよニャ」


「そうしたいのは山々でごじゃんすが、今は描きたいものが思い付かないでごじゃんす」


「それなら、その辺の風景を適当に描けば良いでヤンス」


「いや、それではダメでごじゃんす。ここの人たちには、魂のこもった絵じゃないと評価されないでごじゃんす」


「そうなのか。なら、仕方ない、他の方法を探そう」


「ええ、そうねッピ。とりあえず、ここを見て回りましょうッピ。何かあるかもしれないしねッピ」


「そうだな。では、行こうか」



 小さくて奇妙な形のものがたくさん並べられている棚が、多数ある場所を発見した。


「ここはなんだ?」


「わたくしの電球が、ここは雑貨屋だと言っているのです」


 あの奇妙なものは雑貨なのか。


「変わったものが多くて、面白そうね。お姉さん見ていきたいわ」


「分かったよ。では、いこうか」



 うーむ、本当に妙なものが多いなぁ。


「なんだこの茶色いザリガニみたいな置物は?」


「それは、世の中にうんざりしている人を表現した置物でごじゃんす」


「へぇ、そうなんだ」


 なんでそれを表現するものが、茶色いザリガニなんだ?


 ん?

 もしかして、うんざりだからか!?


 茶色いアレまみれのザリガニということなのか!?


 まあ、どうでもいいか!!



 サラダのようなものが描かれた、皿のようなものを発見した。


「これはなんだろう?」


「それは皿でごじゃんす」


「なんでわざわざこんな絵が描いてあるんだ?」


「この皿に料理を盛り付けると、野菜を食べた気分を味わうことができるでごじゃんす」


「それ、なんか意味あるのか?」


「健康に気を遣っている気分になれるでごじゃんす」


「ええ……」


 気分だけじゃダメだろ!?


 野菜もちゃんと食えよ!!



 手のひらを横向きに差し出している、人間の両手の置物を見つけた。


「これはなんだろう?」


「それは女好きの剣を置くための台でごじゃんす」


 なんだそりゃぁっ!?


「なら、これは女性の手なのか?」


「ただの女性の手ではないでごじゃんす。美女の手でごじゃんす」


「そうだったのか…… って、なんでそんなうちの聖剣を狙ったかのような商品があるんだよ!?」


「そこは不明でごじゃんす」


「そうか……」


 なぜなんだろうな?


 このあたりには、女好きの剣が複数本あるのだろうか?



「おい、おっさん、せっかくだから買ってくれよ!」


「台なら、あるだろ」


「美女の手のヤツは持ってねぇだろ! ケチくせぇこと言ってねぇで買ってくれよ!」


「これいくらするんだ?」


「五〇万ヴォヴァヴィヴェなのです」


「ちょっと高いけど、買うとしようか。聖剣には世話になっているしな」


「ありがとよ、おっさん!」



 また変なものがあったぞ。


 ショッキングピンクのハトのような顔のマスクだ。


 頭頂部に、真っ赤なモヒカンが付いている。


「なんだこれは?」


「それは優劣感と劣等感を表現したマスクでごじゃんす」


「優劣感と劣等感? どの辺がそれを表しているんだ?」


「このマスク全体が表現しているでごじゃんす」


「そうなのか……」


 サッパリ分からないぞ!?



「面白いマスクざます! ヒモノ、それを買うざます!」


 ユモアの声が聞こえてきた。


「これをか? 何に使うんだよ?」


「何に使うとか関係ないざます! 面白いから買うざます!」


「そうなのか……」


「ヒモノがそれをかぶって、一発ギャグをしても良いざますよ」


「それは遠慮しておく」



 さて、こいつはいくらなのかな?


 こいつも五〇万ヴォヴァヴィヴェなのか。


 高いなぁ。

 まあ、いいか、買うとしよう。



「聖剣さんやユモアさんには、プレゼントを買ってあげるのねッピ」


「正妻のわらわには、何も買わないのにねニャ」


「なんだよ、何か欲しいものがあるのか?」


「ここにはないわよッピ」


「変なのばかりだしねニャ」


「なら、何か見つけた時にプレゼントするって」


「仕方ないわね、それで手を打つわニャ!」


「ヒモノさん、私も欲しいでヤンス!」


「私もッスわ!」


 結局、ここにいる女性全員にプレゼントすると約束させられてしまった。



「お客様、そろそろ閉館時間になりますダッペ。退館してくださいダッペ」


 若い女性の職員と思われる方にそう言われた。


「はい、分かりました。では、宿に戻るか」


「今日一日では回り切れなかったでヤンス」


「残りは、また明日だな」


「ええ、そうねッピ。そうしましょうッピ」


 俺たちは複合美術館を出た。



 宿の部屋に戻って来た。


 そういえば、イアーユさんたちはどうしているのだろうか?


 ちょっと探してみよう。



 寝室に行くと、イアーユさんとヴィーミラが寝ていた。


 まだ寝ているのかよ。


 あいつら寝すぎじゃないか?


 まあ、どうでもいいけど。


「ヒモノさん、夕食が来たのです」


「ああ、分かったよ。おい、ふたりとも夕食だぞ! 起きろ!」


「まだ眠いでナンス……」


「ヒモノさん、ここまで夕食を持って来てくださいでナス~。そして、食べさせてくださいでナス~」


「やかましい! 自分で食え!!」



 イアーユさんとヴィーミラを起こし、テーブルのある部屋にやって来た。


 テーブルの上には、大量の人魚焼きが置いてあった。


「えっ、もしかして、それが夕食なのか!?」


「はい、そうなのです」


 またそれかよ!?


 人魚焼き、人気ありすぎだろ!?

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