第60話 斧と抱擁

「次はレイトナさんだ。修行の成果はどうだった?」


「レウィ、どうなのニャ?」


「ステータスが変動していますニュ。それと特殊能力が増えていますニュ」


「どんな能力なんだ?」


「毎度おなじみの包丁が四本に増えていますねニュ。もちろん、私のもですよニュ」


「またかよっ!?」


「ヒモノさんは罪作りな方ですねニュ」


「そうなのか!?」


「その通りねニャ! 罪作りな男よニャ!」


「ええっ!?」


 そんなの生まれて初めて言われたぞ!?


「刺されないようにしてくださいねニュ」


「縁起でもないことを言うなよっ!?」


 というか、お前らが刺さなければ良いんだよ!?



「って、そんなのいいから能力の方を教えてくれよ!」


「そうでもないと思うけどねニャ!」


「いいから、それは置いておこう。それでどうなんだ? まだ何かあるのか?」


「『ステータスの悪口はやめましょうを出す能力』と『愛の抱擁』というものですニュ」


 ステータスの悪口はやめましょう!?


 ステータスボロクソなんていう性悪能力を身に付けていたヤツが、そんなものを!?


 レイトナさんも成長したんだなぁ。


「ヒモノ、あんた何か失礼なことを考えてないニャ?」


「いや、成長したなぁと思っただけだよ」


「何よ、それニャ!?」


「まあまあ、落ち着けって。それで、どんな能力なんだ?」


「ステータスの悪口はやめましょうを出す能力は、名前通りのものですニュ」


「何が出て来るのか、想像も付かないな。どんなものが出るんだ?」


「説明するよりも、実際に出した方が早いと思いますニュ」


「それもそうだな。レイトナさん、ちょっと出してみてくれよ」


「分かったわよニャ」


 レイトナさんの足元に、銀色の両刃のおのが出て来た。


 長さ二メートルくらい。


 刃の側面に『ステータスの悪口はやめましょう』と赤い異世界の文字で書かれている。


「これがステータスの悪口はやめましょうなのか?」


「はい、その通りですニュ」


「斧だな」


「斧ねニャ」


「斧ですよニュ」


「なんで文字の書いてある斧なんだ?」


「そこは不明ですニュ」


「わたくしの電球が、悪口を言うヤツをぶっ叩いて黙らせるためだと言っているのです!」


「怖っ!?」


 ひどい理由だな!?



「これはしゃべったり、自らの意思で動いたりするのか?」


「いいえ、しませんニュ。意思もありませんニュ」


「そうなのか。なら、特殊能力で出した武器になるわけか。レイトナさん、これを使えそうか?」


「どうかしらニャ? ちょっと持ってみるわニャ」


 斧を持ち上げることはできた。


 しかし、振り回すのは無理そうだ。


「ダメねニャ。これは他の人に渡した方が良さそうよニャ」


「私も持ってみますニュ」


 レウィが斧を持ち上げ、振り回して見せた。


 おおっ、レウィはパワフルだな!


 あれなら戦闘でも十分やっていけそうだ。


「扱えそうですねニュ。これは私が使いましょうかニュ?」


「ええ、そうねニャ。そうしてちょうだいニャ」


「分かりましたニュ」


 これでさらに戦力がアップしたな。



「もうひとつのは、どんな能力なのニャ?」


「愛の抱擁は、抱き締めた相手がなんか良い感じになる能力だそうですニュ。それから一回の抱擁で、一日効果が持続するそうですニュ」


「女神の抱擁と同じじゃないか!? 何か違いはあるのか!?」


「不明ですニュ。ステータスにはそうとしか記載されていませんよニュ」


 なんでだよっ!?

 誰が書いているのか知らんけど、もっとちゃんと書けよ!?


「仕方ない、これは試してみるしかないわねニャ! さあ、ヒモノ、抱き締めてあげるわニャ!」


 レイトナさんが満面の笑みで、抱き着いてきた。


 当然のごとく、周囲から殺気が飛んで来た。


 これも全然、良い感じじゃないぞ!?


「ふふっ、なんだか幸せねニャ。どう、ヒモノ、良い感じになったニャ?」


「よく分からないな」


 殺気が飛んで来ていて、悪くなっているような気しかしないのだが……


「そうなのニャ? なら、しばらくの間こうしていましょうニャ」


「女神の抱擁と同じなんだから、もう離れても問題ないだろ」


「細かいことはどうでもいいのニャ! とにかくこうしているのニャ!」


「細かくないな。さっさと離れろ!」


「では、始末なのです!」


「えっ、ちょっと、やめなさいよニャ!?」


 ステーさんとチカさんが、レイトナさんを強引に引きはがした。


 ああ、本当にかしましいなぁ。



「レウィの成果はどうなんだ?」


「身体能力が向上したようですニュ。それから、なぜか私も『愛の抱擁』を身に付けましたニュ」


「レウィもなのか。やはり効果はよく分からないのか?」


「はい、不明ですニュ。仕方ないので、ヒモノさんで試してみましょうニュ」


「やはりそうなるのかよ!?」


「では、いきますよニュ!」


 レウィが抱き着いてきた。



「こ、これは……」


「どうしたんだよ、レウィ?」


「とても温かい気持ちになりますねニュ」


 俺の胸に顔をうずめているレウィがそう言った。


「それは良かったな」


 レウィはかわいいし、温かい。


 だが、背筋はとてつもなく寒い。


 理由は向けられている殺気のせいである。


「ちょっと、レウィ、いつまで抱き着いてんのよニャ! 妾と代わりなさいニャ!」


「後五時間ほど、こうしていたいですニュ」


「長すぎっ!?」


「そんなに待てるわけないでしょニャ!? こうなったら、妾も抱き着くニャ!」


 またレイトナさんが抱き着いてきた。


「ちょっと、いい加減にしなさいよッピ! そこはワタクシの場所よッピ!」


「いえ、私の場所ですピッ!」


 メェールさんとメルウィも抱き着いてきた。


 そして、ステーさんとチカさんもやって来て、また女性陣がもめ出した。


 ああ、やれやれだな……



「愛の抱擁の効果は、女神の抱擁と同じ効果だと私の勘が言っているでナンス」


「そうなのか。なんで名前が違うんだ?」


「そこは不明でナンス」


 意味が分からんなぁ。

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