ハーレムなんて無理だろ。犬ですら多頭飼いキツいんだぞ

犬派兼猫派

迷宮探索編

第1話 「楽しい異世界転生」って排出率3%くらいのSSR枠だろ

 俺の転生先は田舎の小さな農村だった。


 俺が1歳の時、国で内乱が起こった。


 2歳の時、戦争が起きて父親が死んだ。


 3歳の時、魔物の氾濫が起きて戦争どころではなくなった。


 4歳の時、魔物に襲われて母親が死んで、家族は妹だけになった。


 5歳の時、魔王が復活した。


 6歳の時、村が魔物の襲撃を受けた。


 7歳の時、子供に戦闘訓練を施す学校が出来て、俺はそこに入った。


 8歳の時、飢饉で人が沢山死んだ。


 9歳の時、流行り病で人が沢山死んだ。


 そして、俺が10歳の時。



▼▼▼



「キャアアッ!」

「ラ、ライーッ!!」


 前衛を守っていたライが魔物にやられた。


「ガガン、余所見するな!」

「あっ、ウワアアアッ!」


 仲間がやられて動揺したガガンは、ヒュージゴブリンの棍棒を脳天に思い切り食らった。


 床に転がり、額から血を流し、うめき声が上がった。


「ガガン!今治すから!」


 回復担当のヒースィが駆け寄って「ヒール」の魔法を使った。


「ガガン、無事か!?」

「…い、痛え…痛えよぉ…」


 すぐに返事があった。

 どうやら死ぬほどのダメージでは無さそうだ。

 しかし、メンタルの方は完全に折れていた。


「治ったなら立てよ!『勇者』が真っ先に心折れてどうする!」

「…で、でも、こんな数の相手…」


 俺達は今、迷宮内のどことも知れない一室で、無数の魔物に囲まれている。


 魔物の数は10や20じゃきかない。


 俗に言う『モンスターハウス』だ。


「Gugyaaa!!!」


 突っ込んできた魔狼の爪を剣で受ける。


 俺はそのまま後ろへ転がり、巴投げの要領で魔狼をぶん投げた。


「俺1人じゃ持たねえんだ!あとヒースィ!お前は早くライを助けろ!死ぬぞ!」


 怒鳴りつけると、2人はようやくノロノロと動き出した。


「前は俺が張る!ガガンは魔法で支援!」

「わ、分かった」


 本当は最上位戦闘職の『勇者』を前で戦わせるのが一番だが、腰の引けた今のガガンでは死ぬだけだ。


 ちなみに俺のジョブは『剣士』。


 『勇者』とは比べるべくもない一般職だ。


「ライ、ライ、死なないで!ヒール!」


 ライの傷は深い。


 多分致命傷だった。


(それでも『聖女』のヒースィなら…)


 俺は迫り来る魔物共に対して足を重点的に攻撃した。


 敵の数が多過ぎたので、殺す意味はほぼ無かった。


 今はとにかく多くの敵を捌いて、後ろの2人を守らなければいけない。


「ライ!ライ!」

「…………ヒースィ…?」

「「ライ!!」」


 背後で聞こえたライの声に、俺はホッと胸を撫で下ろす。


「よくやった!ヒースィ!」


 流石は最上位回復職『聖女』。


 あれだけの傷を僅かな時間で治し、更には意識まで取り戻させたのだから最早チートの域だ。


「オラァ!」


 俺は足元に転がっていたコボルトを蹴り飛ばして、背後を振り返った。


「今コボルトが飛んでった方が出口だ!煙幕を張って突っ込むぞ!ガガンとライは水魔法で血を落とせ!匂いでバレて捕まったら死ぬぞ!」

「わ、分かった!ライは俺が連れて行く!水よ!」

「水よ!」


 バシャンという飛沫の音を合図に、俺はポーチから煙幕弾を取り出し足元へ叩き付けた。


「いくぞ!」

「Gurue!?」


 突然視界を奪われた魔物共は動きを止める。


(うおおおおお、剣術スキルlv3!斬空波!!)


 俺の放った斬撃が空を駆ける。


 通り道の煙を吹き飛ばし、途上にいた魔物を何体も斬り裂いた。


 血飛沫のアーチの先に出口までの一本道が見えた。


「抜けた!」

「外だ!」

「やったわ!」

「前方敵影無し!そのまま走れ!」


 『モンスターハウス』の外は狭い通路になっていたので、俺はガガン達を先に行かせてしんがりに回った。


 部屋から出て追いかけて来ようとする魔物に火球をお見舞いしてやるためだ。


「ファイアァァボォォォルッ!!!」

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