ガキ大将だった幼馴染が華恋な乙女になっていた件~同棲することになったんだけど、顔を合わせるだけで赤くなるようなタイプでしたっけ?~
旨い・デリシャス・ボノー
第一章 ガキ大将な幼なじみが可憐な乙女だった件
第1話 幼なじみが俺の家に押しかけてくるわけがない
「家の中に泥棒がいるっ!?」
学校から帰ってきた俺─西島蒼太(にしじまそうた)が家のドアを開けて中に入ると、知らない靴が二足あった。リビングには電灯がともっており、中から談笑する声が聞こえてくる。
あと、何でか分からないけど、揚げ物のパチパチ音といい匂いがしてくる……ほんとうに泥棒?
「誰だ……?」
玄関に立てかけてあったバッドを片手に廊下をコソコソと歩く。できるだけ足音をだてずに、それでいてできるだけ速足で。念のためスマホで、単身赴任中の親父の予定も確認してみたが、帰ってくるとは言ってなかった。加えて、妹は全寮制の中学校に通っているので、この時間に俺の家にいるわけがない。
いつも、家には俺一人しかいないし、友達もいないから、誰かが訪れるわけないのだ。
「ふぅー、大丈夫……大丈夫……っしゃ!」
勢いよくドアを開けた。
「誰だ! 人の家に勝手に入ってきて、この泥棒が!」
「……ふぇ?」
「……おん?」
目の前には、下着姿の女性が立っていた。
パッと見の第一印象は、元気よく跳ねるウサギ。
華奢で小柄な体型がそう思わせたのかもしれない。おさげのように、ポニーテールのように元気よく揺れる髪型がそう思わせたのかもしれない。何よりも一番の特徴は、ウサギのように体を震わせながら、ギギギと歯ぎしりが聞こえてきそうなほどに真っ赤に染められた顔で俺を──
「きゃぁあああああ! へんたぁああああい! 出て行きなさいよぉおおおお!」
「ご、ごめんなさぁああああい!」
俺は慌てて部屋から出て、家の表札を確認する。
うん、間違いない、ここは俺の家だ。あれぇ……おかしいぞ? なんで家に知らない人がいるんだ? それに、なんで俺が追い出される側なんだ……? 理不尽じゃね? いや、そんなことよりも、あの顔どっかで見たことがあるような……そう懐かしさを覚えるような感じで……
だーめだー、頭が混乱して何もまとまらない……。
「けど、胸は大きかったな……」
それだけは、良いのか悪いのか、ばっちりと脳に焼き付いていた。
「ごめんね、隆弘君。びっくりしたでしょ?」
ドアが開けられ、玄関からはふくよかで穏やかそうな女性が出てきた。年齢は四十代くらいで、エプロン姿だった。泥棒にしては優しそうな……?
「それとも、凪の下着姿じゃ隆弘君は満足できなかったかしら?」
「え、えーと……」
初凪? 聞いたころある名前だ……その瞬間、頭の中に一つの光景が流れてきた。
──そうちゃんの物はアタシもの! アタシの物はとうぜん、アタシの物! だから、そうちゃんがその手に持ってるデザートは私がもらうんだから!
──ちょっと! そうちゃんとはアタシがあそぶんだから、あなたはダメ! ダメったらダメなの!
──いいっ! そうちゃんは女の子とあそぶのきんしだからねっ! アタシとだけだからねっ!
「おばさんと、初凪……?」
「そうよ、正解」
OKマークを作るおばさん──初凪のお母さん。
泥棒の正体は、どうやら瀬戸口一家のようだった。
瀬戸口一家──瀬戸口さんは幼稚園より前からの幼なじみという奴だ。小学校までは一緒だったんだが、瀬戸口一家は、中学への進学の際、凪のお父さんの仕事の都合で一時出向して行ったのだ。
「ということは、一時出向が終わったってことですか……?」
「まぁ、そんな所かしら?」
いまいち要領を得ない返事だったが、そう言う事なんだと思う。最も、俺の家にどうしているのかはよく分からないし、その辺はまだ聞きたいことではあるが……にしても、初凪の奴も大きくなったって言うか、グッと大人っぽくなったのな……。
「にしても、蒼太君が覚えててくれて良かったわぁ……あの子、可愛くなったとはいえ、結構変わったからねぇ……」
「は、はぁ……」
まぁ、女子は一年か二年、会わなくなるだけで凄く変わるもんな。最初、俺も初凪が初凪だって気づかなかったし。むしろ、あんなガキ大将だった初凪が、あんなに可愛くなって驚いているくらいだ。
「ごめん……もう着替え終わったから」
玄関とリビングを繋ぐ廊下で、おばさんと話していると、リビングのドアが開かれた。初凪は、イチゴのように頬を染めつつも、少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「ああ、そうか。分かった。俺も悪かったな……?」
いや、なんで俺は謝ってるんだ? ただ、久しぶりに再会した凪が……凪が?
「う、うん……わ、私も変な姿見せて……ごめん……大きな声も出したし……」
「い、いや……そんなことないって! むしろ、きれいだったからびっくりしてさ……」
「ふぇっ!? ……ほ、本当に……?」
「う、うん……」
俺は、女子に向かって何を言ってるんだ……いや、そんなことよりも初凪の顔が正面から見れない……顔も暑いし、やけに胸にドクドク音もうるさくて。
レモネード飲んだっけ? 口の中が甘酸っぱいような。
「そっか……ありがとう嬉しい」
「~~っっ!」
くしゃっと、ほころぶように笑みをこぼす初凪にドキッとしたのが、なんだかすごく悔しかった。だからこそ、正面から顔を見ることができなかった。
というかお前、そんなキャラじゃないだろ……もっと傍若無人っていうか、優位が独尊っていうかさ……ったく、調子が狂うな。
「あ、あのね、蒼ちゃん……わ、私ね……!」
やけに顔を赤くした凪が、決意を固めた表情で俺の顔を覗き込んできた時だった。
「あー……愛し合うなら、もっと静かな場所でして欲しいんだけど?」
──ギクッ!
おばさんの咳払いが引き金になって、俺と凪は電流が奔ったかのように体が震えた。
わ、忘れてた……おばさんがいることを。
「まぁ、それだけお互いのことを意識してるなら大丈夫そうね……これからのことを考えると特にね」
「これから?」
チラッと、初凪の顔を伺うと、首まで真っ赤になっていた。おいおい、何が始まるんだ……。
「ええ。同棲することになるんだから、話すことなんてたくさんあるでしょ?」
「…………は?」
え、一時出向が終わって帰ってきたのってそう言う事なの?
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【あとがき】
読んでくださってありがとうございます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
作者から読者の皆様に切実なお願いです。
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