【設定】フォズ・イムガイ国

◆フォズ・イムガイ国 Foz-Imghay (穂瑞日向)


 献慈が最初に降り立った島国。大正時代の日本風だが幕府が存続している。警察機構は奉行所 (都市部)および代官所がその役割を担っている。

 国家元首はミカドだが、政治的実権はショーグンにある (どちらも世襲制)。


 前世紀まで外交相手はヴェロイトやフラマシアなどの一地方との限定的なものだった。遷都を巡って政情が混乱していた半世紀前、パタグレア建国に積極的に関われなかった反省から各地の港を諸国に開放、近代化したという流れがある。


 本島・ナカツ島を挟んで、北のソトモ島、南のオキツ島から成る。本島5+南島2+北島で計8地方。


 ソトモ島……シャーマニズム、狩猟採取、獣人含む複雑な種族構成

 ナカツ島……カムナヤ≒神道、農耕、ヒト中心の社会

 オキツ島……フトノリ≒仏教、漁業、鬼人がやや多い




 古代~中世にかけて皇室・公家がオキツ島で支配権を確立。その際、魔物の駆逐で功績を挙げた者たちが武士の祖先となる。巳九尼流剣術など、対魔物兵法の源流はこの時期に芽吹いた。


 近世にかけてミカドがナカツ島の領有権を主張。武士たちが中心となり進出するが、やがて領地の所有権を巡って互いに争いが起き、乱世となった。新月流などの対人剣術が発展をみせた時期でもある。


 武士たちの中心に立った武家の棟梁=ショーグンはさらに北方、ソトモ島へと進出を望んだが、原住民の抵抗に遭い断念。現在は小規模な交易など、緩やかな交流を持つにとどまっている。


 大名が力を持ちすぎた影響で、ミカドおよび朝廷の権力は相対的に弱体化した。近世後期に藤芳 (ふじよし)家がナカツ島を統一すると、幕府と朝廷の力関係は決定的となる。


 現在、朝廷は祭祀や研究を行う機関として存続。ミカドはショーグンの政治決定を承認する役割と、オキツ島の代理統治を担っている。




 以下の主要都市 (◎○)には奉行所が、ほかは代官所が置かれている。


◎イムガ・ラサ (日向朝)

 首都。人口約九十二万。幕府のお膝元。カムナヤの総本山・神宮がある。


・ワツリ村 (和津里)

 人口五千人弱。神社と温泉で有名な農村。大曽根家がある。


○港町ナコイ (菜乞)

 人口約十万。中規模の港湾都市。外国人が多い。


○鉱山都市キホダト (生火跡)

 人口約十一万。鉱山により栄える。職人の町でもある。


○学究都市ウスクーブ (臼福産)

 人口約二十万。農業により発展した。ウケハリ大学が有名。


◎グ・フォザラ (宮穂瑞原)

 旧都。人口約四十八万。ミカドの御所がある。古来の文化が尊ばれている。




◇注目スポット


僧都滑りの丘

 ナコイ近傍の丘陵。城跡があり、かつて邪教が根城としていた。


シヒラ川 (四平川)

 ナカツ島を横断する大きな川。キホダト~ナコイ付近まで船で下るルートがある。


アグシ川 (阿宮志川)

 首都の東側に横たわる川。ウスクーブの農地に恵みをもたらしている。




◆ワツリ村


 ナカツ島東部にある農村の一つ。水神を祀ったワツリ神社を中心に発展した。同神社では季節ごとの祭りが催されるなど、村民の心の拠り所として親しまれている。


 近代化の影響はこの村にも及んでおり、ウスクーブ式の魔導農法も広く導入されている。また、炊事洗濯を助ける魔導器は一般家庭にまで普及しつつある。


 生活雑貨や娯楽を扱う商店も村内には少なくない。人気の貸本屋では少女雑誌や漫画本の最新号も一週間遅れで入荷され、若者たちの間で取り合いとなっている。




◇ワツリ温泉


 数代前の村長が私財をなげうって掘り当てた温泉は、霊脈の影響を受けた「霊泉」であり、疲労回復などさまざまな効果がある。

 村には湯治客向けの温泉旅館や民宿のほかにも、村民が気軽に立ち寄れる銭湯もいくつかある。




◇ワツリ神社


 主神は大水櫛比売神 (おおみぐしひめのかみ)。配神の徒卑罪神 (あだしひつみのかみ)は温泉の守り神でもある。


 主な建物は本殿や祭祀場、社務所など。敷地内にはほかにも道場や写真館、書庫などがあり、一般の村民にも開放されている。


 施設職員のほとんどは氏子たちで占められるが、中には神職に就いていない社家の子弟や、村外からの移住者も籍を置いている。




◇御子封じ


 みこほうじ、と読む。ワツリ村一帯に古くから伝わる風習。


 古代、河川の氾濫は荒ぶる水神そのものと考えられていた。神の怒りを鎮める生贄は死して人ならざる身となり、神と対話する役目を負う。これすなわち御子の起源である。


 時代が下り治水技術も発達すると、河川は豊穣を与える水神として祀られる。

 一方で御子に対する崇敬の念は形を変え、水神の名代としての地位に封 (ほう)じられることを望まれる。


 現代の御子は、護衛者たる守部 (もりべ)を連れ神宮へと行脚する巡礼者である。

 儀式に臨む資格としては、うるう年の八月十五日=現世と幽世が重なる日に生まれた未婚者が適任だと言われている。




◇中世ワツリ村の御子・万城目和津 (まきめ・かづ)による遺稿


 『ミハカセノフミ』


 かぎりなき しじまあまねし

 なきのうみ ささらなみたつ

 たまさかに わたるゆくへは

 いづかたや をとまほらまの

 ながめをか はたうつさむや 

 よするなみにぞ




◆イムガイの学制


 できる限り単純化すると以下のとおり。


・初等教育 → 尋常小学校 (6年)

・中等教育 → 高等小学校 (2年)

        高等学校 (4年)

        徒弟学校 (1~4年)

・高等教育 → 各種大学・大学院 (2年~)

        師範学校 (2~3年)


 6年間の初等教育が義務教育期間にあたる。中等教育以降を受けられるのは、主に都市部の中流家庭以上で育った少年少女たちに限られる。

 ちなみに澪やその友人たちはワツリ村立高等小学校卒。

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