冬の魔道具
逢坂人辻
第1話 冬の魔道具と一族
万年冬と言える酷寒の地に魔道具を守り続ける一族が居た。
彼らの名を
彼らははるか遠い昔から冬の魔道具を守り続けていた。
冬の魔道具は使用者に大きな代償を支払わせる代わりに大きな力を与え、人の身から逸脱した力を持たせる事ができるとされていた。
澄み渡る青空が曇天になり、雪を降らせ天候を変える事もできると言われていた。
それだけでなく雪のように白い野太刀はその大きさを感じさせない軽さと頑丈さを兼ね備えており、使い手に合わせて大きさも変化する。
また鎧は濃紺色と白色の見た目に野太刀と同じく軽さに加えて、酷寒の吹雪を発生させ、マントは酷寒の地でも暖かく動ける耐寒性能があった。
過去に多くの者達が冬の魔道具を狙い彼らを襲撃するも酷寒の地が彼らと冬の魔道具を守り一族以外が触れた事は彼らの手に渡るまでの間しかなかったといわれている。
冬の魔道具を持つ者が居れば一人で幾百、幾千の軍をも撃退しえた。
そして現在もその事実は変わらなかった。
だが彼らにあるひずみが起きた。里長の子の死産である。事実を知るのは里長とその妻だけであった。
この時点では問題では無かったが偶然訪れていた旅人から赤子を差し出され、その赤子を受け入れてしまった事が大きなひずみの原因となった。
このひずみは、冬の魔道具の守り手を死なせ、里を焼き、里を死滅させる要因となるのだが今はまだ誰もその事を知らない。
――そしてこのひずみから12年が経ち赤子は少年となった。
少年の名はジェニンと名付けられ里長の元で実の子として育てられた。
彼の出生は本人も知らなかった。
そして彼が生まれ落ちてから今日まで冬の魔道具を奪おうとする者達はおらず、穏やかな12年だった。
ジェニンは里長の子として冬の魔道具を守る存在として将来が決まっていたため剣術を修め、冬の魔道具を扱うための秘密の魔法の修練を行っていた。
だがここにきて一つの問題が起きた。実の子ではないため冬の魔道具を扱いきれないという問題だ。本来ではあれば天候を変え、冬の魔法を使い、野太刀はサイズを変え軽々と振るい、酷寒の寒さを打ち消す力が発揮されるはずがジェニンが使うと冬の魔法は弱くなり、野太刀のサイズは変わらず、酷寒の寒さを耐えるには心もとない耐寒性能となってしまう問題であった。
幸か不幸か剣術を修めていた彼にとって野太刀のサイズが変わらない事はまだ軽い問題であったが、天候を変える事が可能ではあったが耐寒性能が弱くなっているため彼の体が耐えられないという大きな問題があったが、冬の魔道具を扱いきれない原因を知らないジェニンは健気にも修練に精を出していた。
「父上僕は何が足りていないのでしょうか?剣術は一人前とおっしゃっていただけましたが魔法や魔道具の扱いだけは大きく遅れています。僕なりに考えて頑張っているつもりではあるのですがこれという感覚をつかめる気配すらありません」
ジェニンは父に真剣な眼差しで問うた。
「何度も言っているがそればかりは日々修練を続け自分の中で感覚を養うしかないのだ。私もお前の歳ぐらいの時には同じように魔道具が使えず困ったものだった。まあお前とは違い剣術は半人前で魔法が一人前だったがな」
里長リエンは物覚えの良いジェニンが未だ魔道具を扱いきれない原因に心当たりがあったがそれを気取られないようにそう答えた。
「お前はよくやっている今日の修練はもう終わりにして友達と遊んできなさい。」
諭すようにジェニンにそういうとリエンは魔道具を宝物殿に仕舞いに行った。
ジェニンは修練が終わると先ほどまでの真剣な眼差しから年相応の少年に戻り、友人達といつも遊ぶ雪の広場へと足を進めた。
そうした日々をジェニンは続け、それから半年が経った頃その時が来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます